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第2回「インスリン療法としてのCSII導入の意義とコツ」

東邦大学医学部内科学講座 糖尿病・代謝・内分泌学分野 教授
弘世 貴久 先生

2. はじめてのCSII導入

ーーCSIIを初めて扱ったのはいつですか?
Dr. 弘世:

今から20年前、留学から帰ってきた時辺りですね。上の先生が使っているのを見て、こういうのをやってるんだ〜と。ミス・アメリカのニコール・ジョンソンがCSIIを付けていたことで、日本でもCSIIが一躍有名になりましたよね。

ーー2000年前後くらいですね
Dr. 弘世:

僕が初めてCSIIを導入したのは、1型ではなく膵全摘した60代後半の女性でした。血糖コントロールは初めて、前歴なしの"フレッシュな"方でした。最初4回注射でしたが面倒くさいと言って全然続かず、CSIIでピッとやる方法を覚えると、「こりゃ、ええわ〜!」ってすごい気に入って、ずっと使っておられました。そんな面倒くさがりの人であっても、頻回注射よりCSIIのほうが楽というケースもあるんだと、意外でした。

ーー"フレッシュな方"とは?
Dr. 弘世:

うちがこれまでやっていたCSII研究では、血糖コントロールに長年苦労して、コントロール不安定な人にやってもあんまりいい結果は得られませんでした。そういう意味で、CSIIは発症したばかりの早い時期、前歴のない"フレッシュな人"に使ってもらうのがいいんじゃないかと思っています。

元々インスリン療法は、内因性インスリンが残っているうちに、できるだけ早く始めるべきと思っています。例えば、同じ6単位打っても、内因性の追加インスリンが仮に最大6単位分残っているとすれば、超速効型を6単位打ったときに、最大で6+6で12単位まで、つまり6〜12単位の間で調節可能です。一方、内因性の追加インスリン分泌が残っていない人は外から6単位打ったら絶対に6単位の効果に固定となり、血糖値は大きく変動します。

CSIIも同じことですよね。内因性インスリン分泌の有無だけではなく、交感神経系の調節機能がある程度残っていれば低血糖も起こりにくいでしょう。しかし神経障害が進んでしまった後では、たとえCSIIをやってもあまり効果がないだろうと思います。

ーーCSII導入は外来だったのですか?
Dr. 弘世:

僕の診療はふだん全部外来ですが、CSIIは外来スキルがなく入院でした。ご存知のように、膵切の人ってコントロールが難しいんです。グルカゴンも出ません。そのうえ膵臓を切ると酵素も出なくなるから栄養吸収も不安定なのです。よけいに血糖値がばらつきやすくなります。


2016年07月 公開

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