腎臓の健康道 ~つながって知る、人生100年のKidney Journey~

腎臓関連団体インタビュー

慢性疾患は、長く付き合っていく病気です
悩みを抱え込まず、仲間とつながりましょう
あなたは一人ではありません

一般社団法人ピーペック
代表理事

宿野部 武志(しゅくのべ たけし)さん

団体の始まりについて教えてください

 私は、3歳の時に慢性腎炎にかかり、18歳から週3日の血液透析を現在まで続けています。長く医療と関わる中で、「患者」は受け身で医療を施される立場でいるだけでなく、病気をもつ立場だからこそ医療に貢献できるという思いと、病気をもつ人をサポートしたいという思いが生まれました。そこで2010年にまず、自身の疾患領域である「腎臓病」で活動を開始しました。
 その活動の中で、患者会の高齢化や活動基盤の脆弱化、幅広い世代、特に若い世代の人たちの課題に寄り添った活動の不足といった、疾患を超えた課題に直面しました。そして疾患領域を問わず病気をもつ人をサポートするため、今までそれぞれに活動してきた疾患が異なる仲間と団結し、ピーペックを設立しました。

2023年7月にピーペック初の合宿を実施した際の一枚。メンバー全員と。
2023年7月にピーペック初の合宿を実施した際の一枚。メンバー全員と。

主な活動内容をお聞かせください

 「病気があっても大丈夫といえる社会」にしていくことを目指し、難病(希少・難治性疾患)やがん、精神疾患、慢性疾患などの病気をもつ人たちをサポートする活動をしています。対象は、1)病気をもつ人(個人)、2)病気をもつ人たちを支援する団体(患者会・患者支援団体など)、3)一般社会の3つです。病気をもつ人が力を発揮し、患者会・患者支援団体がより充実した活動を行えるよう支援し、社会変革のための啓発活動を行っています。具体的には、以下のような活動をしています。

1) 病気をもつ人が望む生活に近づくための支援体制をつくる

  • メディア運営【腎臓病の方を対象としたウェブサイト「じんラボ」(医学的知識や腎臓病をもつ方の体験談等を掲載)他】
  • イベント企画運営【交流会「ピーペックカフェ」を年5回開催、ピアサポート活動「じんサポ」(同じ腎臓病をもつ者が、サポーターとして不安や悩のある方の話を聴き、その想いを受け取る)】

2)患者会が充実した活動をするための支援体制をつくる

  • 事務局運営支援
  • イベント・交流会等開催支援
  • 広報、グローバル活動支援

3)病気があっても大丈夫と言える社会をつくる

  • 様々な立場の方と共にこれからの医療を創るプロジェクトの実施【みんなでつくろうこれからの医療with Kidneyプロジェクト(アンケートを中心に、腎臓病当事者の"こえ"を活かして制作した「CKDシート」を無料配布。腎臓病の基本的な知識や、自己管理等を分かりやすく作成)他】
  • 講演/セミナー企画運営
  • 病気をもつ人向けの資材・文書・サービス等の監修、アドバイザリー
  • 提言・啓発活動【NPO法人日本医療政策機構との協働】
  • 病気と仕事の両立支援事業【病気と仕事の両立支援ラボの運営】
季刊誌「そらまめ通信」を発行
2024年2月「RDD Japan 15周年イベント〜Let's celebrate the 15th RDD Japan MATSURI together!」でのテーブル展示の様子
「病気と仕事の両立支援ラボ」の実験室のページでは、病気と仕事の両立支援に関する様々な動向やデータを発信。
「病気と仕事の両立支援ラボ」の実験室のページでは、病気と仕事の両立支援に関する様々な動向やデータを発信。

今後(2024年5月現在)、予定している活動は?

 ピーペックでは設立以降、病気があっても自分らしく働くためのワークショップや情報発信、環境整備の活動をしてきましたが、今後は病気をもつ人だけでなく、雇用側である企業など、様々な皆様と一緒に病気をもっても自分らしく働き続けられる社会の実現を目指していきます。そのために2024年6月に「病気と仕事の両立支援ラボ」を設立し、病気があっても働きやすい会社について考える共同事業体を2026年までに設立予定です。
 現在、社会では育児や介護の両立支援、がん当事者への支援など、様々なサポートが行われていますが、慢性の病気をもつ人への支援は他の分野に比べて遅れています。今の社会は、長期にわたり通院や薬が必要な慢性の病気になったとき、安心して働き続けられる環境があるとは言えません。
 日本では、働き盛りの40代のおよそ3人に1人が、通院が必要な病気をもっています。慢性の病気をもつことは、誰の身にも起こりうる、私たち自身の課題です。そしてこのことは病気をもつ本人だけでなく、隣で働く同僚、友人、家族、全ての人に関わる問題です。そのため、あらゆる人と一緒になって行動する必要があると考えています。

ゴールや目標についてお聞かせください

 「病気をもつ人に力を:Power to the People with Chronic Conditions」の頭文字から団体名を「PPeCC(ピーペック)」としました。私たちは、病気や、それによってこうむる不利益が「どうしようもない」ものではなく、何かしら解決策がある「どうにかしようがある」状態、「どうしようもある、世の中へ」をミッションに活動しています。活動目標は「1.病気をもつ人が望む生活に近づくための支援体制をつくる 2.患者会が充実した活動をするための支援体制をつくる 3.病気があっても大丈夫と言える社会をつくる」こと。これまでなかなか届かなかった病気をもつ人の"こえ"を集め、病気をもつ人と企業、行政、医療者との間の「かけ橋」となる活動をすることで、医療や社会構造の変革に貢献していきます。

腎臓病のある方や、そのリスクを抱える方へメッセージをお願いします

 腎臓病は、慢性疾患として長く付き合っていく病気です。病気と長く向き合うためには、以下の3つが大切だと思っています。①こころ<メンタル>:夢・生きがい・楽しみを見つける。②支え・繋がり<コミュニティー>:仲間を見つける。③知識<リテラシー>:自分でしっかり学び、病気と向き合う。それぞれはリンクしていますが、そのベースとなるのは「②支え・繋がり<コミュニティー>:仲間を見つける」だと思っています。一人で悩みや不安を抱え込まず、同じ病気をもつ人とつながり、思いを分かち合いましょう。孤立することを避けましょう。じんラボのコミュニティーやSNS等で同じ腎臓病をもつ方とつながりましょう。あなたは一人ではありません。