腎臓関連団体インタビュー
透析がこれから必要となる人のためにも、
お金の心配をすることなく、誰もが
透析を受けられる環境を堅持していきます
一般社団法人 全国腎臓病協議会
事務局長
板橋俊司(いたばし しゅんじ)さん
団体の始まりについて教えてください
一般社団法人全国腎臓病協議会(略称:全腎協)は、全ての腎臓病患者の医療と生活の向上を目的として結成された、透析患者を中心とする腎臓病患者の組織です。当会が設立された1971年当時は、透析の台数が絶対的に不足していたため、治療を受けられる患者が限られていました。社会保険に加入している本人は透析にかかる医療費の負担がありませんでしたが、その家族の場合は5割負担、国民健康保険の加入者に関しては3割負担となっており、透析を受けていたのは世帯の柱である男性の患者が圧倒的に多い状況でした。
また、透析を受けられたとしても高額な医療費を負担しなければならなかった患者の中には、費用を捻出するために貯金を使い果たし、退職金を前借りし、家屋敷を売り払い、生活保護を受けるために離婚し、ついには自ら命を絶っていく人もいました。このような悲劇的な状況を何とか解決したいと、各地で患者会が立ち上がりました。そして東京の病院患者会の呼びかけにより全国組織として結成されたのが、現在の全腎協(全国腎臓病協議会)です。現在、全国の会員数は約9万人で、日本最大の患者会と言われています。
主な活動内容をお聞かせください
腎臓病に関する啓発活動、通院ボランティア送迎活動、電話相談、会報その他刊行物の発行、腎臓病に関する調査・政策提言など(下記)を行っています。
- 腎臓病に関する啓発活動
- 腎臓移植普及のためのキャンペーン活動
- 国への腎疾患対策の実現を請願する署名活動
- 行政への要望活動と政策の提言
- 透析医学会、透析医会等との連携
- 全国大会の開催
- 血液透析患者実態調査の実施
- 会報、その他刊行物の発行とホームページ「全国腎臓病協議会」による情報提供
- 電話相談事業
- 通院介護支援事業
糖尿病ネットワークの読者である糖尿病をもっている方で、腎臓病の合併症リスクが気になる方や透析予防について学びたい方に向けては、各都道府県の加盟組織にて、行政や製薬会社などと協働して透析にならないための講演会等を一般市民向けに開催していますので、腎不全や食事などの自己管理について学ぶよい機会になると思います。また、専門家による電話相談も定期的に行っており、患者・家族、会員・非会員を問わず、相談料無料で受けておりますので、お困りの際にご利用ください。
過去の活動や実績で印象的なできごとは?
患者会最大の成果は、1972年、腎機能障害に身体障害者福祉法が適用され、「更生医療」により10割給付であった社会保険加入者本人を除く、社会保険加入者の家族、国民健康保険加入者の患者の透析費用負担が、低額な一部負担で済むようになったことです。
現在はお金の心配をすることなく、全国どこでも誰もが透析を受けられるようになり、治療を受けながら社会や家庭に復帰し、それぞれの役割を果たせるようになりました。当たり前の医療として定着したこの透析環境を、これから腎不全となり透析になるかもしれない人々のためにも堅持していかねばならないと考えています。
ゴールや目標についてお聞かせください
「腎臓病の早期発見、早期治療により、透析にならない人が増えること」「透析をしていても、一般の方と同じように自己実現のできる人生を送ることができる社会になること」「臓器移植や再生医療研究が進み、腎不全となっても透析の必要のない社会になること」を目指します。
腎臓病のある方や、そのリスクを抱える方へメッセージをお願いします
透析にならないために、また、透析導入を遅らせるために、医療従事者と相談していくことで病気に対する理解が深まり、食事療法や運動療法といった自己管理能力が身についていきます。とりわけ食事療法を長く続けていくには、時々は食べたいものを適度に食べ、友人と外食する楽しい時間をつくっていくことも大切です。
透析と聞くと絶望的な気持ちなることと思います。しかし今は、医学の進歩により透析を受けながら長く生きることができるようになりました。
糖尿病から透析を開始された方でも、元気に働き続けている透析患者さんがいること、旅行を楽しんでいる方、ボランティア活動等で社会に役立つ活動をしている方など、活躍している方々がたくさんいることを知っていただきたいと思います。