腎臓関連団体インタビュー
誰もが、進化し続ける医療の恩恵を受けられるよう
「知らない」「知らされない」ことが不利益にならない
環境整備と患者さんへの情報発信を続けていきます
NPO法人 腎臓サポート協会
理事長
雁瀬美佐 (がんせ みさ)さん
団体の始まりについて教えてください
当協会は、腎不全を病む患者さんたちのQOL(生活の質)を高めることを目的として、腎臓疾患療法に関する情報提供とその普及活動を行う団体として2001年に設立しました。
患者さんはもとより、医療関係者、メディアの方々等も含め、腎臓病の重症化予防や治療法の周知、腎移植を推進したいという熱い思いから始まっています。
主な活動内容をお聞かせください
情報誌の発行や、シンポジウム・セミナーの開催などを通して、慢性腎臓病の重症化予防やQOLを高めるための情報提供、健康増進支援活動、腎代替療法が必要な方への適切な治療選択のための支援・啓発事業を行っています。具体的には下記のような活動があり、最近ではデジタル化を促進してYouTubeやSNSも活用しています。
- ホームページ「腎臓病なんでもサイト」の運営
- 季刊誌「そらまめ通信」の発行(年4回)
- 疾患/治療法啓発用冊子の作成・頒布
- 会員に対するメールマガジンの配信(月1回)
- 市民公開講座・セミナー、健康促進イベント開催
- 患者アンケート調査
- YouTubeの運用とSNSでの情報発信(週1回)
当協会に登録している会員の方の数は、2024年3月末現在で18000人です。ホームページから無料で会員登録できますので、ぜひご覧ください。
最近の活動で、うれしかったエピソードは?
現在、国内で透析を受けている方の97%が血液透析で、3%が腹膜透析です。当協会の会員向けのアンケートから、「コロナ禍を経験し、人の多い場所での治療を避け、できるだけ在宅治療をしたいと思っている人が多い」、「腎代替療法が必要になった時、医療側から説明を受けた治療法が、血液透析>腹膜透析>腎移植の順で少なく、説明内容に偏りがあった」、「患者さんは医療側から説明を受けた治療を選択・継続する傾向が強く、治療説明が患者さんの生涯の治療に大きく影響している」ということがわかりました。
そこで、当協会では2023年に「おうち de 透析キャンペーン」を開始しました。これは、家でできる透析があることを知っていただき、自分らしい治療選択ができるように支援するものです。これらの活動は、腹膜透析学会での優秀演題賞や、慶應義塾大学薬学部KP会での活動奨励賞を受賞しました。学会やアカデミアからの理解は大変心強く、嬉しく、今後のさらなる社会啓発への取り組みの励みとなっています。
どんなゴール、目標を目指していますか?
患者さんが知らない・知らされないことがご本人の不利益にならないような医療環境の整備を目指したいと考えています。そのために、患者さんが医療者と共に治療の選択をするSDM(Shared Decision Making)を通して、自分の体や健康に意識を高く持ち、自らの治療に積極的に参加して自分らしい選択ができるよう、支援いたします。
未病対策、重症化予防に加え、日本では圧倒的に少ない、家でできる透析(腹膜透析、在宅血液透析)と、献腎移植(死後の提供による腎移植)の普及を進めることも重要です。腎臓が悪くなってきている指標、重症化予防の方法、全ての腎代替療法のメリット・デメリットを広く周知し、それらが皆さんの知識(常識)になることを目指したいと思っています。
腎臓病のある方や、そのリスクを抱える方へメッセージをお願いします
糖尿病を罹患している方が糖尿病性腎症に至るケースが多く、課題とされています。また、糖尿病性腎症は、透析導入者の最も多い原疾患となっています。正しい知識がないために腎臓病が悪化し、突然倒れて血液透析の導入に至ったり、腎代替療法の全ての選択肢を知らされず、自分らしい治療方法の選択ができない方も少なくありません。
腎臓が悪くなり始めていることは、健診結果で数値が示してくれます。そのことをしっかり受けとめて、早期に食事や運動等の生活習慣を改めることで、腎臓を守ることができます。腎臓機能が低下して腎不全となっても、人生終わりではありません。家で透析をすることも、施設に通って透析をすることも、腎移植を受けることも、様々な選択肢があります。ご自身の趣味や生活、価値観を重視し、治療を受ける場所や方法をしっかりと考えていただきたいと思います。医療者とよく相談し、納得のいくまで話し合い、「今の自分」に合った治療を選択し続け、希望を持って前向きに積極的に治療に参加してください。
医療はこれからもどんどん進化し続けますので、少しでも長く自分の腎臓を守れば、より進んだ医療の恩恵を受けられます。
当協会がお届けする情報は、主に透析前の保存期の方々を対象としていますが、糖尿病の治療に取り組んでいて、腎臓病の合併症リスクを気にされている方にも同等に重要です。当協会が発信する情報に定期的・継続的に触れ、少しでも長くご自分の腎臓を守っていただきたいと思います。当協会は、そのお役に立てるよう、今後も取り組んでまいります。