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2014年02月10日

全国生活習慣病予防月間「多動(運動のすすめ)」 公開講演会レポート

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生活習慣病の予防とがん治療
 全国生活習慣病予防月間の市民公開講演会「生活習慣病の予防とがん治療」が、1月31日に内幸町ホール(東京都千代田区)で開催された(主催:日本生活習慣病予防協会、がん集学的治療研究財団、セルフメディケーション推進協議会)。

 日本生活習慣病予防協会理事長の池田義雄先生は、「一無、二少、三多」という生活スタイルを提唱している。

 「一無」とは、たばこを吸わないこと。「二少」とは、食事と酒を控えること、「三多」とは、積極的な運動と十分な休養、そして多くの人や物と接する機会をもつこと。このうち「多動:健康づくりのための“運動”のすすめ」と「がん予防と最先端治療」をテーマに、2つの講演が行われた。

多動はなぜ必要か?〜実施率100%の運動指導〜
座長:横田邦信先生(日本生活習慣病予防協会参事/東京慈恵会医科大学教授)
演者:田村好史先生(順天堂大学大学院代謝内分泌内科学・スポートロジーセンター准教授)

 運動は2型糖尿病や高血圧症、脂質異常症などの主要な治療手段として位置付けられているが、治療だけでなく、糖尿病予備群、動脈硬化症の予防にとっても重要な介入方法となる。運動不足そのものが、がんなどの疾患のリスクになることも、しっかりと認識する必要がある。

 順天堂大学の田村好史先生は、骨格筋細胞内の「異所性脂肪」の蓄積が、全身的な肥満から独立してインスリン抵抗性を引き起こす可能性を明らかにした。脂肪は皮下脂肪や内臓脂肪に蓄積すると考えられてきたが、それ以外の肝臓、筋肉にも第3の脂肪ともいうべき異所性脂肪として蓄積し、インスリン抵抗性に関わっている。

 血糖値を左右する臓器は肝臓と筋肉だ。健常者は肝臓と筋肉が正常に働き、糖分を蓄える役割を十分に発揮するが、糖尿病患者は肝臓と筋肉のインスリンの効きが悪く、糖尿病の発症やその過程で糖を蓄える能力が失われていき、血糖値が上昇する。そのような状態が「インスリン抵抗性」で、糖尿病の病態生理のひとつだ。

 実際に、2型糖尿病患者が2週間程度の入院治療に際して、2%の体重減少があると、これに伴い血糖値や中性脂肪値が有意に改善する。その理由は、食事療法により、肝臓内の脂肪(脂肪肝)が減ることと、運動療法により骨格筋の細胞内脂肪が改善すると推察される。

 食事・運動療法をしっかりと行っていけば、異所性脂肪が改善し、確実に効果が出てくる。細かく調べてみると、ふだん運動習慣がなく1日の運動量が100kcal(歩数約3,000歩)ぐらいの人は筋肉に脂肪がたまりやすいという。逆に、1日300kcal(歩数約1万歩)の運動をしている人は、脂肪筋になりにくい。

 つまり、ふだんからたくさん歩いていれば、食生活が多少乱れても病気になりにくくなると推察される。「歩くこと」が、非常に大切であることは、これまで調査結果からも明らかだという。

 気になるのは、日本人は少し太っただけで異所性脂肪が蓄積する可能性が高いことだ。日本人の脂肪摂取比率は50年で4倍近くに増え、交通機関の発達により身体活動量が低下しており、異所性脂肪がたまりやすい生活スタイルをもつ人が増えている。

糖尿病の患者はがんの発症リスクが高い

 糖尿病の患者は大腸、肝臓、膵臓がんのリスクが高くなることを、日本糖尿病学会と日本癌学会の合同委員会が2013年に行った発表で明らかにした。

 日本人の男女33万以上を対象に、糖尿病患者のがん罹患率と、そうでない人のがん罹患率を比較。その結果、糖尿病患者は、肝臓がんのリスクが1.97倍、膵臓がんが1.85倍、大腸がんが1.4倍と高かった。

 両学会は、糖尿病とがん両方の予防につながる生活習慣を推奨するとともに、糖尿病患者が適切にがん検診を受けるよう呼びかけている。

 糖尿病の既往があるとがんにかかりやすくなる理由として考えられているのは、糖尿病が引き起こす体内の変化だ。膵臓から分泌されるインスリンの作用が不足すると、それを補うために高インスリン血症やIGF-I(インスリン様成長因子1)の増加が生じ、これが肝臓、膵臓などの部位における腫瘍細胞の増殖を刺激して、がん化に関与すると考えられている。

 肥満や運動不足によっても高インスリン血症は引き起こされる。肥満や運動不足と関連の強いがんでは、類似のメカニズムでがんを発症する可能性がある。

がんでは死なないために〜がん予防と最先端治療について
座長:井上修二先生(日本生活習慣病予防協会副理事長/桐生大学副学長)
演者:佐治重豊先生(公益財団法人ががん集学的治療研究財団理事長/岐阜大学名誉教授)

 人間の身体は約60兆個の細胞でできている。そしてその細胞の中にある遺伝子に異常が起きて、正常な細胞がん細胞になる。その意味で、がんは「遺伝子の病気」だという。

 人間の体は、多くの細胞からできている。体には、傷ついた遺伝子を修復したり、異常な細胞の増殖を抑えたり、取り除く仕組みがある。しかし、異常な細胞が監視の目をすり抜け、無制限に増えることがある。それががんという病気だ。

 がんは老化現象のひとつであり、完全に予防するのは困難で、誰にでもがんになるリスクはある。しかし、これまでに行われた大規模調査などから、多くのがんの発生には生活習慣が深く関わっており、それらの生活習慣を変えればがんになる確率を下げられることが分かってきた。

 たとえば、禁煙や節酒を心がけることで、肺がんや大腸がんなどのリスクを下げることができる。 体格では「太りすぎ」や「やせすぎ」は、がんになるリスクを高めることがわかっている。成人期の体重増加を5kg未満にすることがん予防に役立つ。

 食事では、「野菜と果物をしっかりとる(野菜を1日に350g以上をとるのが目標)」、「塩分や塩蔵食品は控えめにする」、「赤肉、加工肉のとり過ぎに注意する」という3つのポイントをおさえて、バランスのよい食事をとることが大切だ。

 過度の飲酒もがん全体のリスクを上げる。アルコールを男性は1日に2杯まで、女性は1杯までを心がけることが大切だ。

 感染症については、ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)が胃がんのリスクを上げることや、B型およびC型肝炎ウイルスが肝がんのリスクを上げることが知られている。

 たばこの煙には多くの発がん物質が含まれている。喫煙についてのデータでは、例えばたばこを吸う人の喉頭がんになるリスクは、吸わない人の約1.6倍に上昇する。喫煙している人にとっては、禁煙が最大のがん予防法といえる。

 運動(毎日60分程度のウォーキングと週60分程度の強めの運動が目安)が、がんリスクを下げることも知られている。

がんの治療法は進歩している 集学的治療への期待

 がんの標準的な治療法は、「外科療法(手術)」、「放射線治療」、「化学療法(抗がん剤)」の3つに大別される。がんの治療法は進歩している。従来は手術がん治療の中心にあったが、近年は化学療法や放射線療法が進歩し、がんの種類やステージ(病期)によっては目覚ましい効果が認められている。

 今後のがん治療の中心となるキーワードは「集学的治療」だ。各分野の専門医や薬剤師、看護師、臨床検査技師などがチームを組み、さまざまな治療技術を戦略的に組み合わせた治療を行うことが、最適な治療を実現するために必須となる。

 さらに、できる限り体への負担の少ない治療技術の開発も成果を得ている。たとえば、外科領域における腹腔鏡などの内視鏡技術の進歩、放射線治療分野における粒子線治療、化学療法の分野における分子標的薬の登場など、いずれもより体にやさしく、より治療効果の高い治療技術が開発されている。

 がん集学的治療研究財団は、がんの集学的治療に関する助成や、臨床研究とデータの収集・解析などを通じて、患者に優しくかつ患者の望む治療効果をより効率的に実現する治療法を確立することを目指して活動している。

(一社)日本生活習慣病予防協会
(公財)がん集学的治療研究財団
(認定NPO)セルフメディケーション推進協議会

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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