「社会的な孤立」と「閉じこもり」は、高齢者の健康に悪影響をもたらたす。両者が重なると、高齢者の死亡リスクは2倍に上昇することが、東京都健康長寿医療センター研究所の研究で明らかになった。
埼玉県和光市で郵送調査を実施
健康な高齢者であっても、「社会的な孤立」と「閉じこもり」が重なると、どちらも該当しない高齢者に比べ、6年後の死亡率が2.2倍に上昇することが、東京都健康長寿医療センター研究所の調査で明らかになった。
「社会的な孤立」が高齢者の死亡率を高めることが知られている。また、週1日以下程度しか外出しておらず、外出頻度が低い状態である「閉じこもり」も、同様に高齢者の死亡率の上昇に関連する。しかし、これらが重積すると、高齢者の健康にどのような負の相乗効果をもたらすかは不明だった。
そこで研究グループは、首都圏近郊の埼玉県和光市で2008〜2014年に行った郵送調査(有効回答数は1,023人)をもとに、高齢者の「社会的な孤立」と「閉じこもり」について解析した。
公共交通機関の使用や日常品の買い物、食事の用意などの日常生活動作に問題のない健康な研究参加者を、社会的孤立および閉じこもり傾向の有無の組み合わせで4群に分け、6年間の死亡率の違いを検討した。
この研究では、同居家族以外との対面や、電話やメールなどの非対面のコミュニケーション頻度が、両者を合わせても週1回未満の者を「社会的な孤立」とみなし、ふだんの外出する頻度(買い物、散歩、通院など)が1日1回未満を「閉じこもり傾向」とみなした。なお、「社会的な孤立」とは、他者との接触頻度が極端に減少した状態で、主観的な孤独感や孤立感とは区別した。
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「社会的な孤立」と「閉じこもり」が重責すると危険
「社会的な孤立」と「閉じこもり」が重責していた高齢者は7.6%だった。解析した結果、両者が重積している高齢者では、それぞれ該当しない高齢者に比べて、6年後の死亡率が2.2倍高くなり、社会的孤立か閉じこもり傾向どちらか一方のみに該当する者より死亡率が顕著に高くなることが判明した。
また、完全に閉じこもりになる前の、外出頻度が1日1回未満の「閉じこもり傾向」も健康に悪影響を及ぼすことが分かった。
これまでの研究では、「社会的な孤立」と「閉じこもり」は、それぞれが高齢期の健康度に影響することが確かめられている。「今回の研究では、これらの要因の片方だけが健やかな生活を脅かす危険因子なのではなく、どちらか一方の要因の影響が強いわけでもないことが分かりました。両者が重積している状態が、高齢者の健康にとって問題なのです」と、研究者は述べている。
これは、孤立にともなうコミュニケーション・ソーシャルサポート面の欠乏と、閉じこもり傾向に伴う身体・認知・精神的不活動が、相乗的に健康状態に影響するからだと考えられる。
「高齢期の健康を維持するために、社会的にも身体的にも活動的な生活が重要であり、"交流なき外出"と"外出なき交流"の両者に気をつける必要があることが示されました。また、完全に閉じこもってしまう前の閉じこもり傾向の状態であっても、健康に負の影響を及ぼすため、予防的な観点から早めの注意が必要です」と、研究者は指摘している。
研究は、東京都健康長寿医療センター研究所の藤原佳典研究部長の研究グループによるもので、医学誌「International psychogeriatric」オンライン版に発表された。
東京都健康長寿医療センター研究所
Co-existence of social isolation and homebound status increase the risk of all-cause mortality(International psychogeriatric 2018年7月19日)
[ Terahata ]