職場のストレスを抱える労働者で、メタボリックシンドロームの危険性が上昇することを、北里大学と東京大学の研究グループが明らかにした。
「労働者のメタボを予防するために、職場の環境を改善することが重要」と、研究者は述べている。
職場の心理社会的要因とメタボの関連を解明
内臓肥満に、高血圧、高血糖、血中脂質異常などの症候が同時に重なったメタボリックシンドロームは働き盛りの世代に多い。メタボは、心筋梗塞や脳卒中などの循環器疾患、2型糖尿病、全死亡などの重要なリスク要因となる。
一方、▼仕事の量的負担が重い、▼裁量権がない、▼上司や同僚からの支援を得られない、▼交代制勤務、▼長時間労働などは、職場におけるストレスの原因(心理社会的要因)となる。
北里大学と東京大学の研究グループは、職場の心理社会的要因とメタボの発症との関連を明らかにした。前向き研究に限定した質の高い研究をメタ分析した。
研究は、北里大学医学部公衆衛生学の堤明純教授、東京大学大学院医学系研究科精神保健学分野の川上憲人教授および渡辺和広助教らの研究グループによるもので、医学誌「Obesity Reviews」に発表された。
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好ましくない心理社会的要因がメタボを1.4倍に増やす
研究グループは今回、2016年12月までに公表され、職場の心理社会的要因とメタボの発症リスクとの関連を前向きに検討した観察研究の論文を系統的に検索。
抽出した4,664件のうち条件を満たした8件の論文を対象にメタ解析を行い、これらの関連を検討した。
その結果、職場での好ましくない心理社会的要因にさらされている労働者のメタボの発症は、そうでない労働者に比べて47%増加することが明らかになった(相対リスク1.47; 95%信頼区間1.22-1.78)。
特に質の高い研究のみを選んだ場合の相対リスクは40%上昇した(同1.40; 1.16-1.70)。
仕事の要求度と裁量の自由度が影響
職場でのストレスを高める「ストレイン」(仕事の要求度と裁量の自由度)と、交代制勤務に関する研究が多く、メタボと関連が深いことも分かった。
仕事において、自らの考えや思い、アイディアなどを反映でき、自分の主体性や独自性を発揮できること、あるいは自分の判断で進められることは、自らの存在感や存在意義を感じることができ、自己効力感にもつながり、快適さや仕事の満足度に大きく影響する。
「今回の研究は、職場の好ましくない心理社会的要因のメタボ発症への影響を量的に検証したもっともエビデンスレベルの高いもの。労働者の循環器疾患などを引き起こす生物学的な機序についての研究が進むことを期待している」と、研究者は述べている。
北里研究所
Work‐related psychosocial factors and metabolic syndrome onset among workers: a systematic review and meta‐analysis(Obesity Reviews 2018年7月25日)
[ Terahata ]