糖尿病をもっている人は、肝臓がんを発症する危険性が糖尿病でない人に比べ2〜3倍高いことが、約17万人を対象とした調査で明らかになった。
「肝臓がんはがん全体からみると、発症数は多くはないのですが、肝臓がんが原因で死亡する人は30年前に比べ3倍に増加しています。そして、2型糖尿病の人は肝臓がんを発症するリスクが高いのです」と、南カリフォルニア大学のウェンディー セティアワン氏(予防医学)は話す。
糖尿病の人は肝臓がんの発症率が2〜3倍に上昇
調査は、米国に在住しているハワイ系、日系、アフリカ系、ラテンアメリカ系、コーカソイド系の米国人の合計17万人を対象に、16年追跡して行われた。期間中に約500人が肝臓がんを発症した。
糖尿病をもっている人では、そうでない人に比べ、肝臓がんの発症率が、ハワイ系で2.33倍、日系で2.02倍、アフリカ系で2.02倍、ラテンアメリカ系で3.3倍、コーカソイド系で2.17倍に上昇することが明らかになった。
肝がんの多くを占めるのは、肝臓の中の細胞がんになる「肝細胞がん」だ。まったく正常の肝臓から肝臓がんができることは稀だが、肝炎やアルコールの飲み過ぎ、生活習慣病など何らかの背景因子のある人は肝臓がんの発症リスクが高くなる。
最近は、肥満やアルコールの飲み過ぎなどが原因となるアルコール性脂肪肝は減少しており、「非アルコール性脂肪肝」が増えているという。
摂取エネルギーが消費エネルギーを上回ると、余分なエネルギーはグリコーゲンや中性脂肪につくり替えられ、体に蓄えられる。中性脂肪は内臓脂肪や皮下脂肪に蓄えられるほか、肝臓にも貯蔵される。肝細胞の30%以上に中性脂肪がたまると脂肪肝と診断される。
「2型糖尿病の人はそうでない人に比べ、脂肪肝の頻度が2倍高いのです。日本人は米国人に比べ肥満が少ないのですが、米国で暮らしている日系米国人では、脂肪肝が高い頻度でみられます」と、セティアワン氏は話す。
日本人を含むアジア人が欧米式の生活をおくり、内臓脂肪がたまりやすい食事を続けていると、脂肪肝になりやすいという。
関連情報
検査を定期的に受け肝臓の状態をチェック
肝臓に脂肪が蓄積されるのに加えて、炎症をともなうのが特徴だ。脂肪肝によって慢性の肝障害が進行し、末期には肝硬変や肝がんへと進行することがある。
肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、肝臓がんを発症しても、初期には自覚症状がほとんどないが、健康診断の血液検査でGOTやGPTの値が上昇しているときは注意が必要だ。
GOTは肝臓以外の臓器にも含まれる酵素であるのに対して、GPTはほとんどが肝臓にある酵素を示している。GPTのみが高い場合には、肝臓そのものに障害があることが疑われる。
「2型糖尿病をもっている人は肝臓がんを発症するリスクが高いことが確かめられました。最近の米国の調査では、糖尿病のある人の半数は検査を受けておらず、自分が糖尿病であることに気付いていないことが明らかになりました。糖尿病と肝臓の検査を定期的に受けることが必要です」と、セティアワン氏は強調する。
近年の遺伝子研究の発展はめざましいものがある。肝臓がんの治療にも、遺伝子を運ぶ身体に無害なウイルスを使った遺伝子治療が考えられているという。現在のところまだ研究の段階だが、実用化されれば肝臓がんの治療は大きく変わっていく可能性がある。
Diabetes Identified as Risk Factor for Liver Cancer Across Ethnic Groups(米国がん研究学会 2013年12月8日)
[ Terahata ]