腎症の早期発見と治療の重要さを啓発するために、国際腎臓学会(ISN:International Society of Nephrology)と国際腎臓財団連合(IFKF:International Federation of Kidney Foundations)は、毎年3月の第2木曜日を「世界腎臓デー」とすることを共同で提案し、来年3月10日に正式に実施すると発表した
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世界中で糖尿病と高血圧症の発症数が増加しており、先進国では年間100万人以上の患者が治療を受けており、毎年25万人の患者が新たに発症している。腎症は糖尿病、高血圧症の患者の主な死因となっており、腎症患者では心血管疾患が起こるリスクが高いことが知られている。
腎症が増えた要因として、世界的な2型糖尿病の患者数の増加が挙げられる。2型糖尿病の患者数は現在の1億5,400万人から2030年までに3億6,000万人に増加すると予測されている。その40%以上が腎症や心血管疾患の発症リスクが高く、病気を早期発見し治療を行わなければ10%以上が病期が末期まで進む危険があると予測されている。また、腎症や心疾患で亡くなる人の数は2015年に世界で3,600万人に増えるとの予測もある
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高血圧症や糖尿病、腎症は発症してから長い時間を経て見つかることが多い。また、診断されたときに適確な治療が行われていない場合も多い。IFKFは、各国の政府や医療制度が早急に取り組むべきことが腎症の早期発見と予防であることは明確だとしている。しかし比較的簡便な検査で腎症を発見することができ、
予防が有効であることは、まだ十分に知られていない
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腎症は、血清クレアチニンと尿アルブミンを定期的に測定することで発見でき、血圧、血糖、脂質をコントロールすることで治療や予防ができる。またアンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACEI)やアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)などによる治療が有効だ。
経済に与える影響も深刻だ。腎症が進行し慢性的な腎不全になると、人工透析を生涯受け続けるか、腎臓移植が必要になる。先進国での透析費用は患者1人あたり年間平均6万5,000ドル(約750万円)、腎臓移植の費用は年間4万ドル(約450万円)に上る。
「世界腎臓デー」を設けることで、世界の腎臓専門医や医療従事者だけでなく、患者や家族、一般やマスメディアなどに広く啓発することが期待されている。
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詳細は国際腎臓財団連合のサイトへ(英文)
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