セルフメディケーション時代のSMBG
新しい尿糖自己測定(SMUG)を視野に入れて
新しい尿糖自己測定(SMUG)を視野に入れて
第三次国民健康つくり運動としてスタートしている健康日本21は、新に制定された「健康増進法」によって法的な裏打ちがなされ、栄養、運動、休養、そして飲酒と喫煙、さらには疾病を対象とした歯、糖尿病、循環器疾患、そして癌の一次予防に向けて、その活動を幅広く展開している。いずれも実践に伴っては、個々人の役割そして個々人の責任がクローズアップされ、個々人の健康行動こそは、広義の「セルフメディケーション」だとして捉えられている。
狭義のセルフメディケーションは、ちょっとした身体の変調、たとえば風邪や下痢、腹痛などについて市販薬(一般用医薬品やスイッチ OTC)を用い、チェックのために体温計を使うなどして自己治療をすることを意味する。
広義のセルフメディケーションはたとえば生活習慣病、中でも2型糖尿病を例にとると、これの予備軍や軽症例は食生活、運動を中心に適正体重の維持に努めその推移を知る情報として食前、食後の尿糖を調べる、機会をみて血糖や HbA1C の検査を受けるというチェックを自らの裁量で取り入れてセルフコントロールする。加えて食後の高血糖が示唆される状態などを含めて、高血糖が認知されるようになった場合には適切な薬物をも導入した治療を、医療スタッフの指示のもとで取り入れ、セルフケアの充実をはかり、持続する高血糖の招く糖尿病に特有な慢性合併症(網膜症、腎症、神経障害など)と、心・脳の虚血性病変(動脈硬化)を予防しつつ心身をより健全な状態、すなわちヘルスプロモーションに向けた努力をする事になる。
今、行政も含めていろいろな分野からセルフメディケーションの必要性が叫ばれている。このような中でわが国では平成14年から「日本セルフメディケーション推進協議会」(会長・千葉大学名誉教授 山崎幹夫、大正製薬社長 上原 明、マツキヨ社長 松本南海雄、日本生活習慣病予防協会理事長・タニタ体重科学研究所所長 池田義雄)が結成され、昨年からは NPO 法人としての活動を展開している。
狭義のセルフメディケーションは、ちょっとした身体の変調、たとえば風邪や下痢、腹痛などについて市販薬(一般用医薬品やスイッチ OTC)を用い、チェックのために体温計を使うなどして自己治療をすることを意味する。
広義のセルフメディケーションはたとえば生活習慣病、中でも2型糖尿病を例にとると、これの予備軍や軽症例は食生活、運動を中心に適正体重の維持に努めその推移を知る情報として食前、食後の尿糖を調べる、機会をみて血糖や HbA1C の検査を受けるというチェックを自らの裁量で取り入れてセルフコントロールする。加えて食後の高血糖が示唆される状態などを含めて、高血糖が認知されるようになった場合には適切な薬物をも導入した治療を、医療スタッフの指示のもとで取り入れ、セルフケアの充実をはかり、持続する高血糖の招く糖尿病に特有な慢性合併症(網膜症、腎症、神経障害など)と、心・脳の虚血性病変(動脈硬化)を予防しつつ心身をより健全な状態、すなわちヘルスプロモーションに向けた努力をする事になる。
今、行政も含めていろいろな分野からセルフメディケーションの必要性が叫ばれている。このような中でわが国では平成14年から「日本セルフメディケーション推進協議会」(会長・千葉大学名誉教授 山崎幹夫、大正製薬社長 上原 明、マツキヨ社長 松本南海雄、日本生活習慣病予防協会理事長・タニタ体重科学研究所所長 池田義雄)が結成され、昨年からは NPO 法人としての活動を展開している。
セルフメディケーションの立場からみたセルフチェック
例えば2型糖尿病という生活習慣病があり、食事、運動等の生活改善に取り組んだ場合について考えてみると誰しもがその成果、すなわち改善に向けた努力の結果をチェックしてみたいと考える。増加した体重(肥満)については体重計や体脂肪計による情報を、また血糖値に関しては自らの生活内容に密着した形でその動態を血糖自己測定(SMBG)、あるいは尿糖自己測定(SMUG)で捉えようとするのは自然な流れである。表1は、2型糖尿病についての予知と予防 のために必要な情報を「2型糖尿病かかりやすい条件」として示したものである。2型糖尿病の大部分に遺伝の重みのあることはよく知られている。これを背景に、若い世代からの生活習慣の歪みが多くの場合肥満、特に内臓脂肪型肥満を介して2型糖尿病の発症を促してくる。
そこで2型糖尿病の一次予防対策としては、このかかりやすさのチェックとともに体重、体脂肪、腹囲、内臓脂肪面積の推移に注目し、その一方で健康診断に際して行なわれる血糖検査や血糖マーカーであるヘモグロビンA1C の数値をふまえて、食後高血糖のチェックに血糖自己測定が勧められる。これが叶わなけえば食前、食後の尿糖測定によって自らの食後高血糖についての把握が望まれる。
表1 2型糖尿病にかかりやすい条件 点数 1.血縁者に糖尿病がある 3 2.20代前半よりも体重が10%以上増えている 2 3.血縁者に肥満、脳卒中、心臓病(狭心症など)がある 1 4.砂糖や脂肪分を好んで食べる 1 5.車が足代わりの運動不足 1 6.アルコールをよく飲む 1 7.ストレスの多い生活をしている 1 |
そこで2型糖尿病の一次予防対策としては、このかかりやすさのチェックとともに体重、体脂肪、腹囲、内臓脂肪面積の推移に注目し、その一方で健康診断に際して行なわれる血糖検査や血糖マーカーであるヘモグロビンA1C の数値をふまえて、食後高血糖のチェックに血糖自己測定が勧められる。これが叶わなけえば食前、食後の尿糖測定によって自らの食後高血糖についての把握が望まれる。
精緻なインスリン自己注射療法に不可欠な SMBG
1型糖尿病と2型糖尿病の一部では精緻なインスリン自己注射療法が必要とされる。そのための条件は表2、表3にみるごとくである。セルフメディケーションというコンセプトの中で、インスリン自己注射療法に求められるのは、より精緻で高度のセルフメディケーションである。その典型例が血糖を自分ではかる、そして注射を自分で行なうという精緻な自己インスリン注射療法である。
インスリン自己注射療法は、食前、食後の血糖コントロールを良好にし、糖尿病に特有な慢性合併症を防止、あるいは芽の出始めた初期病変を治療し重大な結果に行き着かないよう工夫・配慮することにある。図1は、このような推移を定期的にチェックするための条件と成績の読み方を示している。ここで常に7点以上を保つことが勧められる。
インスリン自己注射療法の導入は上に述べたような2型糖尿病の場合、経口血糖降下薬に加えて長時間作用型のインスリンを1日1回投与するという方法から、注射や、血糖自己測定手技が安定、かつ正確に行なえるようになった時点からは得られた情報に基づいて、これに毎食前の速効型、あるいは超速効型インスリンの使用を加味し、最終的なインスリン自己注射療法は、1日4回注射と血糖自己測定成績をフィードバックする形での精緻なインスリン注射療法へと推移させる。この中で、合併症の防げる血糖コントロールの目安であるヘモグロビンA1C を連続的に7%以下に保って行くことが望まれる。
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インスリン自己注射療法は、食前、食後の血糖コントロールを良好にし、糖尿病に特有な慢性合併症を防止、あるいは芽の出始めた初期病変を治療し重大な結果に行き着かないよう工夫・配慮することにある。図1は、このような推移を定期的にチェックするための条件と成績の読み方を示している。ここで常に7点以上を保つことが勧められる。
図1 自己管理と良いコントロールの自己評価(10点満点)
(7点以上 ---- 優、4点以下 ---- 要注意)
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インスリン自己注射療法の導入は上に述べたような2型糖尿病の場合、経口血糖降下薬に加えて長時間作用型のインスリンを1日1回投与するという方法から、注射や、血糖自己測定手技が安定、かつ正確に行なえるようになった時点からは得られた情報に基づいて、これに毎食前の速効型、あるいは超速効型インスリンの使用を加味し、最終的なインスリン自己注射療法は、1日4回注射と血糖自己測定成績をフィードバックする形での精緻なインスリン注射療法へと推移させる。この中で、合併症の防げる血糖コントロールの目安であるヘモグロビンA1C を連続的に7%以下に保って行くことが望まれる。
予備軍、軽症糖尿病にも有用な SMUG(尿糖自己測定)
生活習慣病としての2型糖尿病については、医療スタッフとの協力関係の中でチェック、ケア、プロモーションという形のセルフメディケーションを当然のこととして受け入れねばならない。病気の持っている特質上チェックの主体は血糖検査に求められ、その具体策が過去25年以上にわたって血糖自己測定(SMBG)として展開されていた。しかし、この主要な成果は1型糖尿病を中心にインスリン自己注射療法を行なっているもので明らかにされてきたが、今これをまだインスリン自己注射療法を必要としない段階にあるもの、すなわち予備軍や軽症糖尿病にも普及させる努力がなされている。
しかし、これには多くのバリアが存在する。身近な点では採血に伴う痛みの問題、測定に伴う費用の問題、頻回測定の困難さ等々である。このような諸条件を克服する形で予備軍、ないしは軽症糖尿病の初期変化として捉えられる食後高血糖の実態を無侵襲で、経済的にかつ頻回になされる手段として尿糖検査の活用が積極的に見直される段階になってきている。
K.K.タニタは本年6月、バイオセンサーによる尿中ブドウ糖測定を簡便、安価、頻回に行なうことの可能なデジタル尿糖計を市場に送り出す(写真1)。尿中にはバイオセンサーの機能に関して、干渉成分が大変多く含まれている。これらによる測定への干渉を排除し0〜2000mg/dLまでの尿糖を定量し、その成績をデジタル表示できるこの新尿糖計は、予備 軍を含めた糖尿病のセルフメディケーションにおいて新たなチェックの手段を提供するという点で、見方によっては従来の SMBG を超える有用性を発揮してくれる可能性が見えてきている。図2は臨床検査用の大型機器による尿糖定量値との相関を、図3は米飯量の多寡による血糖変化とそれに呼応した尿糖変化を、さらに図4は75g OGTT で境界型を示した症例における10日間余の食前、食後の尿糖量の変化(推移)を示している。
写真1 デジタル尿糖計 |
しかし、これには多くのバリアが存在する。身近な点では採血に伴う痛みの問題、測定に伴う費用の問題、頻回測定の困難さ等々である。このような諸条件を克服する形で予備軍、ないしは軽症糖尿病の初期変化として捉えられる食後高血糖の実態を無侵襲で、経済的にかつ頻回になされる手段として尿糖検査の活用が積極的に見直される段階になってきている。
K.K.タニタは本年6月、バイオセンサーによる尿中ブドウ糖測定を簡便、安価、頻回に行なうことの可能なデジタル尿糖計を市場に送り出す(写真1)。尿中にはバイオセンサーの機能に関して、干渉成分が大変多く含まれている。これらによる測定への干渉を排除し0〜2000mg/dLまでの尿糖を定量し、その成績をデジタル表示できるこの新尿糖計は、
図2 尿検体による性能試験(臨床用尿糖検査機との相関) 臨床用尿糖検査機に対し高い相関性を示している。 |
図3 デジタル尿糖計による米飯量の評価 対象 OGTT: 境界型 男性: 53歳 身長: 155cm 体重: 64kg BMI: 26.5 HbA1c: 5.1% 方法 カロリーを調整(320kcal)した 惣菜と100-300gに量を変えた米飯 (145-435kcal)を食べた前後の 血糖値、尿糖値を測定。 米飯量の違いにより明らかに尿糖値が変化している。 |
このような成績は、尿糖を試験紙法で半定量していた時代から、尿糖をデジタル測定できるという新しい時代を迎えていることを強く印象づけ、これが新しいセルフメディケーション時代における、特に糖尿病の一次予防に資する可能性 を強く感じさせてくれる状況をもたらしている。20数年前「尿糖から血糖へ」というスローガンを掲げてスタートした血糖自己測定の有用性に加えて、ここに再び「尿糖の見直しと尿糖自己測定の活用」が強くアピールされる。
2004年03月
※2012年4月からヘモグロビンA1c(HbA1c)は以前の「JDS値」に0.4を足した「NGSP値」で表わされるようになりました。過去のコンテンツの一部にはこの変更に未対応の部分があります。