7. HbA1cと尿糖検査ほかによる補完
医療機関の役割とセルフチェックの重要性
医療機関の役割とセルフチェックの重要性
1) 血糖マーカー(HbA1cなど)による評価
糖尿病の自己管理に際して、医療機関における医師をはじめとする医療スタッフの役割は極めて重要である。ここでは「血糖検査は在宅で、HbA1cはクリニックで」という組み合わせ検査により、コントロール状態の把握が容易になる。
血糖検査値が点を捉えるものであるのに対して、HbA1cほかの血糖マーカーの測定は比較的長期的なスパンで自己測定された血糖値との相関を明確にできる点が良い。これによりいっそうコントロール状態の理解が深められることになる。
血糖自己測定の基本プロトコールの1例をあげると、(1) 空腹時血糖と就寝前は毎日か隔日、(2)食前と食後(2時間)の組み合わせを2〜4回/週、(3)深夜を1〜4回/月、(4)低血糖、シックディなど異常を感じたさいのspot checkということになる。
このさいHbA1cが6.5%以下、8%以上、そしてこの両者の中間にある者に3区分し、インスリン投与回数も考慮しながら血糖自己測定の回数の増減をはかることが勧められる。すなわちHbA1cが6.5%以下にコントロールされていれば、空腹時血糖は隔日あるいは週に2〜3回測定と指示するなどである。
2) 血糖自己測定機器選択のポイント
現在、わが国では20種類以上の血糖自己測定器・センサーが市販供給されている。測定機・センサーの分類方法としては、(1)測定原理・使用酵素、(2)測定値の換算方法、(3)測定器の形状やセンサーの梱包形態、(4)特殊機能の有無などによる。
測定原理は比色法と電極法の2つに分類される。血糖自己測定の測定原理は血液中のグルコースを基質とした酵素反応が利用されているが、この血液中グルコース濃度に応じた酵素反応の量を色素の変化として捕らえるのが比色法で、電流量の変化として捕らえるのが電極法である。それぞれ色素や電流量の変化から計算されたグルコース濃度が表示される。
使用される酵素は一般的にグルコースオキシダーゼ(GOD)とグルコースデヒドロゲナーゼ(GDH)の2つに分類されていたが、GDHについては酵素番号やグルコースに対する特異性が異なるGDH-PQQ(酵素番号:EC.1.1.5.2)とGDH-NAD(酵素番号:EC.1.1.1.47)の2つの酵素が存在することから、現在使用されている酵素はGOD、GDH-PQQ、GDH-NADの3つに分類される。
各医療機関においてはいずれの機種が血糖自己測定を希望する個々人のニーズに合うものか選択のポイントを適正にしなければならない。そのポイントを列挙すると(1)価格がリーズナブルである、(2)使い勝手が良い(操作が簡単、メンテナンスが楽にできる、機器が小型・軽量である、持ち運びしやすいなど)、(3)ニーズに合った付加価値(音声対応、パソコンへの接続など)が備わっている、(4)指先外測定やケトン体測定が可能などである。これらについて適切なアドバイスができる対応が求められる。2)
3) 採血のための穿刺用具
機器の選定に加えて穿刺用具の適切な選択も忘れてならない。穿刺器は、穿刺用具(ペン型など)に穿刺針(ランセット)を装着するタイプ(装着型)と、穿刺用具を使わずにランセットのみで穿刺を行うタイプ(単体型)がある。患者個人の使用における主流は装着型であるが、医療機関内で多人数に対応する病棟などでの特に入院患者等のPoint of Care Testing(POCT)に際しては、血液汚染などをも考慮すると、単体型使用の有用性が高い。
以上、医療機関に於ける医療スタッフは血糖自己測定に必要な測定器・センサーをはじめ採血のための穿刺用具まで多数の種類が供給されていることをふまえて、現行の採択製品に満足することなく、患者サイドに立った適切な選択肢が駆使できるようにしていくことが望まれる。
4) 予備軍、軽症糖尿病に有用なSMUG(尿糖自己測定)
資料提供:タニタ
しかしこれらについても医療スタッフとの協力関係の中でチェック、ケア、プロモーションという形の自己管理の推進は積極的にはかられねばならない。病気のもっている特質上チェックの主体は血糖検査にあり、その具体策は過去20年以上にわたって血糖自己測定を勧めるという形でなされてきた。
しかし、これには多くのバリアが存在する。身近な点では採血に伴う痛みの問題、測定に伴う費用の問題、測定を頻回に行なうことの煩わしさや困難さ等々である。このような諸条件を克服する形で予備軍、ないしは軽症糖尿病の初期変化として捉えられる食後高血糖の実態を無侵襲で、かつ経済的に、そして頻回に認知しうる手段として尿糖検査の活用が見直される段階になってきている。3) 4)
K.K.タニタはバイオセンサーによる尿中ブドウ糖測定を簡便、安価、頻回に行なうことの可能なデジタル尿糖計を市場に送り出している。この機種は、尿中に含有されているバイオセンサーの機能 に影響する干渉成分の影響を排除し0〜2000mg/dLまでの尿糖を定量し、その成績をデジタル表示できる機能 をもっている。
これは予備軍を含めた糖尿病の自己管理において新たなチェックの手段を提供するという点で、見方によっては従来のSMBGを超える有用性を発揮してくれる可能性がある。尿糖を試験紙法で半定量していた時代から、尿糖をデジタル測定できるという新しい時代を迎え、30年前「尿糖から血糖へ」というスローガンを掲げてスタートした血糖自己測定に加えて、ここに再びセルフチェックに於ける「尿糖の見直しと尿糖自己測定の活用」をアピールさせるものとなってきている。
糖尿病の自己管理に際して、医療機関における医師をはじめとする医療スタッフの役割は極めて重要である。ここでは「血糖検査は在宅で、HbA1cはクリニックで」という組み合わせ検査により、コントロール状態の把握が容易になる。
血糖検査値が点を捉えるものであるのに対して、HbA1cほかの血糖マーカーの測定は比較的長期的なスパンで自己測定された血糖値との相関を明確にできる点が良い。これによりいっそうコントロール状態の理解が深められることになる。
血糖自己測定の基本プロトコールの1例をあげると、(1) 空腹時血糖と就寝前は毎日か隔日、(2)食前と食後(2時間)の組み合わせを2〜4回/週、(3)深夜を1〜4回/月、(4)低血糖、シックディなど異常を感じたさいのspot checkということになる。
このさいHbA1cが6.5%以下、8%以上、そしてこの両者の中間にある者に3区分し、インスリン投与回数も考慮しながら血糖自己測定の回数の増減をはかることが勧められる。すなわちHbA1cが6.5%以下にコントロールされていれば、空腹時血糖は隔日あるいは週に2〜3回測定と指示するなどである。
2) 血糖自己測定機器選択のポイント
現在、わが国では20種類以上の血糖自己測定器・センサーが市販供給されている。測定機・センサーの分類方法としては、(1)測定原理・使用酵素、(2)測定値の換算方法、(3)測定器の形状やセンサーの梱包形態、(4)特殊機能の有無などによる。
測定原理は比色法と電極法の2つに分類される。血糖自己測定の測定原理は血液中のグルコースを基質とした酵素反応が利用されているが、この血液中グルコース濃度に応じた酵素反応の量を色素の変化として捕らえるのが比色法で、電流量の変化として捕らえるのが電極法である。それぞれ色素や電流量の変化から計算されたグルコース濃度が表示される。
使用される酵素は一般的にグルコースオキシダーゼ(GOD)とグルコースデヒドロゲナーゼ(GDH)の2つに分類されていたが、GDHについては酵素番号やグルコースに対する特異性が異なるGDH-PQQ(酵素番号:EC.1.1.5.2)とGDH-NAD(酵素番号:EC.1.1.1.47)の2つの酵素が存在することから、現在使用されている酵素はGOD、GDH-PQQ、GDH-NADの3つに分類される。
各医療機関においてはいずれの機種が血糖自己測定を希望する個々人のニーズに合うものか選択のポイントを適正にしなければならない。そのポイントを列挙すると(1)価格がリーズナブルである、(2)使い勝手が良い(操作が簡単、メンテナンスが楽にできる、機器が小型・軽量である、持ち運びしやすいなど)、(3)ニーズに合った付加価値(音声対応、パソコンへの接続など)が備わっている、(4)指先外測定やケトン体測定が可能などである。これらについて適切なアドバイスができる対応が求められる。2)
3) 採血のための穿刺用具
機器の選定に加えて穿刺用具の適切な選択も忘れてならない。穿刺器は、穿刺用具(ペン型など)に穿刺針(ランセット)を装着するタイプ(装着型)と、穿刺用具を使わずにランセットのみで穿刺を行うタイプ(単体型)がある。患者個人の使用における主流は装着型であるが、医療機関内で多人数に対応する病棟などでの特に入院患者等のPoint of Care Testing(POCT)に際しては、血液汚染などをも考慮すると、単体型使用の有用性が高い。
以上、医療機関に於ける医療スタッフは血糖自己測定に必要な測定器・センサーをはじめ採血のための穿刺用具まで多数の種類が供給されていることをふまえて、現行の採択製品に満足することなく、患者サイドに立った適切な選択肢が駆使できるようにしていくことが望まれる。
4) 予備軍、軽症糖尿病に有用なSMUG(尿糖自己測定)
デジタル尿糖計「UG−201」
平成20年4月から、HbA1c8%以上でインスリン非投与の2型糖尿病で生活習慣病管理が行なわれている患者に関しては500点/年1回の血糖自己測定加算が適応される。ここに念願だったインスリン非投与の2型糖尿病への血糖自己測定が認められたわけであるが、このしばりに該当しない多くの予備軍や軽症糖尿病については、血糖自己測定のハードルは依然として高いものがある。資料提供:タニタ
しかし、これには多くのバリアが存在する。身近な点では採血に伴う痛みの問題、測定に伴う費用の問題、測定を頻回に行なうことの煩わしさや困難さ等々である。このような諸条件を克服する形で予備軍、ないしは軽症糖尿病の初期変化として捉えられる食後高血糖の実態を無侵襲で、かつ経済的に、そして頻回に認知しうる手段として尿糖検査の活用が見直される段階になってきている。3) 4)
K.K.タニタはバイオセンサーによる尿中ブドウ糖測定を簡便、安価、頻回に行なうことの可能なデジタル尿糖計を市場に送り出している。この機種は、尿中に含有されているバイオセンサーの
これは予備軍を含めた糖尿病の自己管理において新たなチェックの手段を提供するという点で、見方によっては従来のSMBGを超える有用性を発揮してくれる可能性がある。尿糖を試験紙法で半定量していた時代から、尿糖をデジタル測定できるという新しい時代を迎え、30年前「尿糖から血糖へ」というスローガンを掲げてスタートした血糖自己測定に加えて、ここに再びセルフチェックに於ける「尿糖の見直しと尿糖自己測定の活用」をアピールさせるものとなってきている。
|
2008年08月
※2012年4月からヘモグロビンA1c(HbA1c)は以前の「JDS値」に0.4を足した「NGSP値」で表わされるようになりました。過去のコンテンツの一部にはこの変更に未対応の部分があります。