理事長時代の取り組み
岡山大学医歯薬学総合研究科 産科・婦人科学教授
岡山市立総合医療センター 顧問
第3代理事長 平松祐司
第2代理事長の中林正雄先生のあとを受け2011年4月から2020年11月まで、約10年間理事長を務めさせていただきました。その間、会員・役員各位、特に常務理事の方々、副理事長の岩本安彦先生、佐川典正先生には大変お世話になりました。理事長時代に取り組んだ主な事業には次のようなものがあります。
- 学会の法人化 理事長時代の最も大きなミッションは本学会を一般社団法人化し、学会運営を軌道にのせることがあり、当時の副理事長の岩本先生を中心に準備していただき2015年に一般社団法人化しました。その後は佐川副理事長と協力し、その都度、種々の問題点を改善・」整備してきました。法人化後4年経過し、one cycle終了したので、2020年にその仕上げとして定款全体を司法書士にも再検討してもらい、必要な定款の改定も行い一般社団法人としてどうにか整備できたように思います。
- DREAM Bee Study 2つめの事業としては、2013年から学会主導で、妊娠中に発見された糖代謝異常のフォローアップのDREAMBee Study(Diabetes and Pregnancy Outcome for Mother and Baby Study)を開始したことがあります。本研究は、妊娠糖尿病・糖尿病合併妊娠の妊娠転帰および母児の長期予後に関する登録データベース構築による多施設前向き研究で、日本における糖代謝異常合併妊娠の実態を明らかにし、さらに母児の予後へ及ぼす影響について検討し、糖代謝異常合併妊娠の妊娠転帰の改善のみならず女性および次世代の糖尿病発症予防に寄与することを目的としています。
- 妊婦の糖代謝異常診療・管理マニュアル発刊 妊婦の約10%に何らかの糖代謝異常が発見されるようになった現在、管理指針をまとめる必要があると感じていました。関連するガイドライン的なものとしては、日本産科婦人科学会と日本産婦人科医会共同発刊の「産婦人科診療ガイドライン産科編」に2項目、日本糖尿病学会の「糖尿病診療ガイドライン」に1項目あるのみでした。より診療に即したものとして、本学会から「妊婦の糖代謝異常 診療・管理マニュアル」を2015年12月に発刊し、妊娠前から産後フォローアップまでの60項目につきまとめ、広く普及してきました。また、3年後の2018年12月に改訂第2版を発刊しました。
- 機関誌、ニューズレターの整備と各賞 守屋達美委員長を中心とした編集委員会メンバーの尽力により、機関誌「糖尿病と妊娠」も整備され、電子投稿・査読システムになり、ニューズレターも電子化されました。また、研究奨励賞(大森賞)の整備、若手奨励賞の新設を行いました。
- 妊娠糖尿病診断基準の改訂 2010年の妊娠糖尿病診断基準の改訂には委員長として関わってきましたが、最後の詰めのところで、日本糖尿病学会と若干の相違があったため、両学会で委員会を立ち上げて協議し、2015年に現在の統一した診断基準にすることができました。本診断基準は日本産科婦人科学会でも承認され使用されています。
- 血糖自己測定SMBGの適応拡大 妊娠中の糖代謝異常に対するSMBGの適応拡大に当たっては、自らヒアリングに出かけ、2回続けて適応拡大してもらうことができ、現在の形にすることができました。
- 国際妊娠糖尿病学会IADPSG2020開催 最後の大きな仕事はIADPSG2020開催でした。これは大森安恵名誉理事長の長年の夢でもあり、大森先生の長年にわたるこの分野での国際貢献が認められ、わが国で開催できる運びになったものと認識しています。当初、2020年11月13日〜15日、メルパルク京都で開催の予定で、情報交換会、会長招宴も含めて、すべての準備終了していたところで、COVID19パンデミック問題が勃発し、IADPSG本部とも協議に協議を重ね、やむなくWeb開催に変更し、最初から計画し直しました。この作業に当たっては、IADPSGの理事であり、第36回日本糖尿病・妊娠学会の会長、そしてIADPSG2020の副会長もお願いした杉山隆先生に尽力いただきました。
同様の調査研究は、大森名誉理事長が長年され、その後は佐中眞由実先生、学会内の委員会で行ってきましたが、これを学会主導の前方視的研究にし、全国レベルで展開している所に意義があります。本研究は次第にデータが出つつあり、今後とも継続し、わが国から世界に向けて有益な情報発信ができるものと思っています。
DREAMBee Studyでは、副産物としてそのコアメンバーに協力いただき、AMED研究「出産後の糖尿病・メタボリックシンドローム発症のリスク因子同定と予防介入に関する研究」を平松班として2期させていただきました。このAMED研究はその後、国立成育医療センターの荒田尚子先生を中心に新研究「IoTを活用した肥満妊産婦の重症化予防のための行動変容に関する研究」が継続しているのは嬉しいことです。
合同委員会委員
<日本糖尿病・妊娠学会>
平松 祐司、安日 一郎、難波 光義、内潟 安子
<日本糖尿病学会>
羽田 勝計、植木浩二郎、渥美 義仁、綿田 裕孝
2回目の改定では従来の項目に加え、「75gOGTT の基準3点のうち2点以上」、「75gOGTTの基準1点以上かつBMI≧25」が認められ、大幅にSMBGの保険適応範囲が拡大しました。同時に、今後のSMBG使用に当たっては、2014年のワークショップのコンセンサス(糖尿病と妊娠15(1):70-90,2015)にしたがって、1日4検を基本に必要最小限のSMBG実施を行うよう会員に喚起しました。
Web開催ながら、8つのテーマで24名のその分野のトップの研究者に発表いただきました(プログラム)。大森名誉理事長には学会最後の締めくくりとしてSpecial lecture: The path I walked fully ―Foundation of the field of diabetes and pregnancy―をご講演いただき、IADPSG Lifetime Achievement Awardを受賞されました。COVID19パンデミックの中、関係各位の協力により国際学会を無事終了でき感謝しております。
理事長在任中に本学会の会員数も800人以上にまで増え、一般社団法人としての体裁も整ってきたように思います。今後は、杉山新理事長を中心に本学会がさらに発展することを念願しております。
2021年06月 更新