厚生労働省は、「健康日本21(第二次)」の中間評価報告書の素案を「推進専門委員会」に提示した。全53項目の目標の達成状況では、6割超に当たる32項目を「改善している」と評価した。
糖尿病については、糖尿病腎症による透析導入がやや減少しているが、目標値に向けて改善していない項目も目立つ。
「日常生活に制限のある期間」
男性で0.63年、女性で0.71年短縮
厚労省の研究班が3年に1度の国民生活基礎調査(大規模調査)を使って推計した。熊本地震の影響で調査できなかった熊本を除く46都道府県のデータを使用した。
素案には「日常生活に制限のない期間」(健康寿命)と「日常生活に制限のある期間」について、それぞれ平均値が示された。
「健康日本21」(第二次)の目標である「平均寿命の増加分を上回る健康寿命の増加」は、男女とも達成と判定されたことが明らかになった。
「健康寿命」は、国民生活基礎調査で、健康上の問題で日常生活に影響がないと答えた人の割合や年齢別の人口などから算出する。
介護を受けたり寝たきりになったりせずに日常生活を送れる期間を示す「健康寿命」が、2016年は男性72.14歳、女性74.79歳だったと公表した。
前回調査の2013年の調査から男性は0.95歳、女性は0.58歳、それぞれ延びた。平均寿命との差は男性8.84歳、女性12.35歳で、やはり縮小している。
60.4%が「改善している」と評価
健康日本21(第二次)は、厚労省が推進する「21世紀における第2次国民健康づくり運動」のことで、2013年度から開始された。日本の医療費の3割を占める、がん、虚血性心疾患、脳血管疾患、2型糖尿病などの生活習慣病を抑制することが大きな目標だ。
同省では、具体的な目標の全53項目について、目標設定後5年をめどに中間評価を行うとともに、10年をめどに最終評価をすることで、健康増進と医療費抑制の取り組みに反映させたい考えだ。
素案では、全53項目のうち、32項目(60.4%)を「改善している」(a)とした一方、19項目(35.8%)を「変わらない」(b)、残りの2項目をそれぞれ「悪化している」(c)、「評価困難」(d)と評価した。
脳血管疾患と虚血性心疾患の死亡率が大幅減少
75歳未満のがんの年齢調整死亡率(人口10万人当たり)については、2015年は78.0で、2010年のベースライン値84.3より減少していることから、「a」と評価した。
また、がん検診の受診率は、2016年は胃がんが男性46.4%、女性35.6%、肺がんが男性51.0%、女性41.7%、乳がんが女性44.9%などで、2010年のベースライン値よりも改善が見られたとして「a」とした。
脳血管疾患の年齢調整死亡率に関しては、2016年は予想された改善率を上回り、目標値を達成しているため「a」と評価した。脳血管疾患の年齢調整死亡率は、2010年には10万人当たり男性49.5人、女性26.9人だったが、2016年はそれぞれ36.2人、20.0人に改善した。
虚血性心疾患の年齢調整死亡率も改善しており、目標値を達成しているため「a」とした。虚血性心疾患の年齢調整死亡率は、2010年には10万人当たり男性36.9人、女性15.3人だったが、2016年はそれぞれ30.2人、11.3人に改善した。
糖尿病腎症による透析導入はやや減少
糖尿病については、糖尿病腎症による年間新規透析導入患者数は、2011年の1万6,803人をピークにやや減少し、横ばい傾向がみられることから「b」とした。2016年は透析導入全体の43.2%を占めており、透析全体に占める割合も横ばいとなっている。
糖尿病の治療継続者の割合は、「糖尿病を指摘されたことがある者における治療の状況」をもみると、2010年とほぼ同等であり、目標値に向けて改善していないので、評価は「b」。
血糖コントロールの「不良」の減少については、特定健診でHbA1c検査実施者のうち8.4%以上であったのは0.96%(男性1.34%、女性0.52%)で、目標の1.0%以下となったことから、評価は「a」となった。
特定健診の実施率は21%増 特定保健指導は42%増
特定健康診査受診率は8.8ポイント(2010年より21%増)、特定保健指導は5.2ポイント(2010年より42%増)増加しているが、目標値には到達していない。
一方、健診実施率を都道府県別にみると、最大(63.4%)と最小(39.3%)の差は24.1ポイントであったが、どの都道府県においても2008年度に比べ増加している。
特定保健指導実施率では最大(30.4%)と最小(12.2%)の差は18.2ポイントであり、実施率には都道府県格差がみられるが、どの都道府県においても実施率の向上がみられる。以上のことから評価は「a」となった。
健康寿命が男女で延伸 都道府県別1位は?
健康寿命を都道府県別でみると、1位は男性で山梨の73.21歳、女性は愛知の76.32歳。1位と46位を比べると男性2.00年、女性2.70年の差がある。
2位以下は、男性は埼玉 73.10歳、愛知 73.06歳、岐阜 72.89歳、石川 72.67歳。女性は愛知 76.32歳、三重 76.30歳、山梨 76.22歳、富山 75.77歳、島根 75.74歳となっている。
第11回健康日本21(第二次)推進専門委員会(厚生労働省 2018年3月9日)
[ Terahata ]