米国がん学会などが策定した「がん予防ガイドライン」を守っていれば、がんの発症率と死亡率が低下することが、米国アリゾナ大学の調査で確かめられた。
がん予防ガイドラインを実行するのは難しくない
世界保健機関(WHO)によると、世界中で820万人が毎年がんを原因として亡くなっている。がんを効果的に予防するための対策を推進するために、米国がん学会(ACS)、世界がん研究基金(WCRF)、米国がん研究協会(AICR)は、「がん予防ガイドライン」を策定した。
「不健康な食事、運動不足、アルコールの飲みすぎ、肥満などの生活スタイルが、がんの発症の20%に影響していると考えられます。これに喫煙や受動喫煙を加えると、米国のがんによる死亡の3分の2に不健康な生活スタイルが関わっています。つまり、生活スタイルを改善することで、がんの多くは予防が可能なのです」と、アリゾナ大学公衆衛生学部のリンゼイ ケーラー氏は言う。
がんを予防するための対策 米国がん学会(ACS)のがん予防ガイドライン
● 標準体重を維持する
生涯にわたり健康的な体重を維持することが、がんの予防につながる。肥満を予防するために必要なことは「高カロリーの食品や飲料を控えること」と「適度な運動をすること」。
● 適度な運動を習慣として続ける
適度な運動を週に合計150分間行うか、中強度の運動を75分行うことが勧められる。テレビの前でソファーに横たわり、エンターティメント番組ばかり見続けるのは体に良くないので、日常生活で身体活動を増やす工夫する。
● 高カロリーの食品を食べない
肥満のある人は、食事を見直して体重を減らすことで、健康増進の効果を得られる。加工食品を利用するときは、栄養表示ラベルを見て栄養成分をチェックする。
● 植物性の食品をとる
体重コントロールを改善するために、食品を選ぶことが大切。野菜や果物は低カロリーで、ビタミンやミネラルなど体に良い栄養成分が含まれる。大豆などの豆類も十分に摂る。
● 加工肉や赤身肉を控える
加工肉や赤身肉はがんの発症リスクを増やすので食べ過ぎに注意する。
● 精製されていない全粒粉や玄米を食べる
穀類は精製されていない全粒粉や玄米には、食物繊維などが豊富に含まれる。
● アルコールに注意
アルコールの飲み過ぎはがんの発症を増やす。節度ある適度な飲酒量は1日平均純アルコールで20g程度で、これは「ビール中ビン1本」に相当する。飲酒後に顔が赤くなる「フラッシング反応」を起こす人は、これより飲酒量を少なくした方が良い。
がんの多くを予防し死亡リスクが大幅に低下
アリゾナ大学の研究チームは、過去10年以内に実施されたがんと生活習慣の関連を調べた12件の研究を解析した。対象となったのは25~79歳の男女だった。
解析した結果、「がん予防ガイドライン」を遵守すると、全てのがん発症率を10~45%減少し、全てのがん死亡率を14~61%の減少することが明らかになった。
ガイドラインの遵守によって、女性の乳がんで19~60%、子宮内膜がんで23~60%、男女の結腸直腸がんで27~52%、それぞれ発症リスクが減少した。
ガイドラインの遵守が高い場合と低い場合と比較した研究では、ガイドラインにより多く従った人で、がんの発症リスクと死亡リスクが低下する傾向がみられた。
ある研究では、5つ以上のアドバイスに従った女性は、推奨を満たさなかった女性に比べ、乳がん発症が60%低いことが分かった。従った項目がひとつ増えるごとに、乳がんリスクは11%減少した。
「がん予防ガイドラインのすべてを守っていれば、がんの発症リスクを完全になくせるわけではありませんが、がん発症の多くを予防でき、がんが原因で死亡するリスクを大幅に低下できることは確かです」と、ケーラー氏は言う。
「がん予防ガイドラインは心筋梗塞や脳卒中などの死亡リスクの高い深刻な病気を予防・改善するためにも効果的です。ご自分の生活を見直して、改善できる点があれば少しずつでも変えていくことをお勧めします」と指摘している。
[ Terahata ]