労働時間が週に55時間以上の人は、脳卒中や心筋梗塞の発症リスクが高いという研究結果が発表された。長時間の労働によるストレスや生活習慣が影響しているとみられている。
勤務時間が長くなるほど発症リスクは上昇
働き過ぎは体によくないと言われているが、そのことを科学的に証明する調査結果が発表された。この研究は、英国のユニバーシティー カレッジ ロンドンのミカ キビマキ教授(疫学・公衆衛生)らによるもので、医学誌「ランセット」に発表された。
一つめの研究は、52万8,908人を平均7.2年追跡した調査した研究を解析したもの。週55時間以上働く人は、通常勤務の人に比べて脳卒中のリスクが33%上昇することが示された。
脳卒中のリスクは、勤務時間が長くなるほど高まった。通常勤務の人を基準にすると、週41~48時間マイルドなオーバーワークでも脳卒中リスクは10%上昇、49~54時間の労働では27%上昇した。
喫煙、アルコール摂取、高血圧、高コレステロール、運動不足などの影響を考慮しても、長時間労働が脳卒中のリスクを高めることは明らかだった。
二つめの研究は、60万3,838人を平均8.5年間追跡して調査した欧州、米国、オーストラリアの25件の研究を解析したもの。
冠動脈疾患の発症のリスクが、週55時間以上働く人々では、週35~40時間の通常の勤務時間の人々に比べて、13%高いことが明らかになった。
長時間労働により、脳卒中や冠動脈疾患の発症のリスクが上昇するメカニズムは不明だが、「長時間の労働によるストレスと、それによって引き起こされる喫煙・飲酒などの不健康な習慣、そしてデスクワークからくる運動不足がリスクを高めているのではないか」と、キビマキ教授は述べている。
「産業医や保健指導者は、長い時間働くことが脳卒中や心筋梗塞などの冠状動脈疾患の発症リスクを高めることを知っておくべきだ」としている。
Working long hours linked to higher risk of stroke(2015年8月20日)
[ Terahata ]