厚労省第4回健康日本21(第二次)推進専門委員会が、2013年度から施行されている健康日本21(第二次)の、糖尿病、循環器疾患、がん、慢性閉塞性肺疾患(COPD)の4疾患における各目標項目の進捗状況について報告を行った。
糖尿病有病者の増加は抑制傾向 腎症による新規透析導入患者は減少
糖尿病については、有病者の増加は抑制傾向にあり、腎症による新規透析導入患者は、策定時(2010年)の1万6,247人から1万6,035人(2013年)に減少した。
一方で、治療継続者の割合は策定時の63.7%から62.0%(2012年)に減少。血糖コントロール不良者の割合は1.2%で、策定時と現状で変化がなかった。
糖尿病の重症化・合併症の発症を予防するために、地域における診療連携体制を促す事業をさらに推進する必要がある。
脳血管疾患・虚血性心疾患の死亡率は減少
循環器疾患(脳血管疾患・虚血性心疾患)については、女性の年齢調整死亡率が目標値(それぞれ10万人当たり脳血管疾患24.7、虚血性心疾患13.7)を達成し、男性も目標値に届かないものの減少傾向にあることが分かった。
しかし、循環器疾患の危険因子である高血圧(収縮期血圧の平均値)は、男性138mmHg、女性133mmHgで、それぞれ策定時の値から変化していなかった。
総コレステロール240mg/dL以上の者の割合は、男性11.3%、女性19.9%となり、ともに減少傾向にある。一方、LDLコレステロール160mg/dL以上の者の割合は、男性8.4%、女性11.8%と改善していない。
特定健診・特定保健指導の実施率は伸び悩んでいる 「データヘルス計画」に期待
メタボリックシンドロームの減少を目的とした特定健診・特定保健指導の実施率はそれぞれ46.2%、16.4%と策定時から伸び悩んでおり、2017年の目標(70%以上、45%以上)に届いていない。
特定健診の未受診の理由は、「医療機関で受診している」「まだ健康なので必要がない」「時間の都合がつかない」の3つが共通していることが判明した。
保険者が作成する「データヘルス計画」で、特定健診と特定保健指導の実施率のさらなる向上を目指した保健事業に取り組む保険者は多い。目標達成に向け、栄養・食生活、身体活動・運動、飲酒の生活習慣の改善が必要だ。データヘルス計画の取組みに対する期待は高まっている。
厚労省が推進する「スマート・ライフ・プロジェクト」では「食品中の食塩や脂肪の低減」に取り組む企業を登録する事業を開始する予定だ。食塩や脂肪の含有量が従来品に比べ10%以上低減していることが条件となる。
慶應義塾大学公衆衛生学の岡村智教氏は、「健康づくりの観点から、塩分濃度が高い食品の塩分を低減することで、国民の食塩摂取量を減らせると期待している」と述べた。
すべての部位のがんの検診受診率が向上
75歳未満のがんの年齢調整死亡率は減少傾向にあるものの、国立がん研究センターがん対策情報センターは、目標達成が難しいという統計予測を出している。
ただし、すべての部位のがんの検診受診率は向上している。目標値の50%(胃、肺、大腸がんは40%)は達成できなかったが、胃がんは男性45.8%、女性33.8%に、肺がんは男性47.5%、女性37.4%に、大腸がんは男性41.4%、女性34.5%、子宮頸がんは女性42.1%、乳がんは女性43.4%に向上した。
一方で、がん検診の指針に基づかない検診を実施する市区町村は2009年の69.4%から77.3%に増加していた。「検診受診率向上キャンペーンや好事例の共有」「がん検診クーポン券や検診手帳の配布」「市町村におけるがん検診の実施と精度の向上」といった対策が必要とされている。
女性の乳がんについては、死亡率の全体目標は85%の達成度にとどまる見込み。35~54歳の若年層(1950年代以降生まれ)では減少しているが、高齢層では増加が続いている。
COPDは、疾患の認知度は25%から30.1%に向上したが、80%の目標達成には遠く及ばない現状が浮き彫りになった。
北海道大学の西村正治氏は「COPDの主な原因はたばこ。喫煙率は減りつつあるが、COPDによる死亡者数は逆に増え続けている。禁煙により発症予防が可能であることや早期発見が重要である」と述べている。
第4回健康日本21(第二次)推進専門委員会(厚生労働省 2015年7月17日)
[ Terahata ]