がんを予防するために効果的なのは、「標準体重の維持」と「適度な運動の継続」であることが、約50万人を対象とした調査で明らかになった。
がんを予防する生活スタイル
米国のイェシーバー大学アルベルト アインシュタイン医学校とNCIがんセンターの共同研究チームは、米国立衛生研究所と米国退職者協会が協力して行われている「NIH-AARP食事・健康調査」に参加した米国人を対象に調査した。調査では1995〜96年に約50万人を対象に食事と生活についてのアンケートを行った。
2001年に発表された米国がん学会(ACS)のがん予防ガイドラインでは、次の生活スタイルをアドバイスしている。糖尿病の治療とも共通する内容が多い。
がんを予防するための対策 米国がん学会(ACS)のがん予防ガイドライン
● 標準体重を維持する
健康的な体重を生涯にわたり維持することが、がんの予防につながる。肥満を予防するために必要なことは「高カロリーの食品や飲料を控えること」と「適度な運動をすること」。
● 適度な運動を習慣として続ける
適度な運動を週に合計150分間行うか、中強度の運動を75分行うことが勧められる。テレビの前でソファーに横たわり、エンターティメント番組ばかり見続けるのは体に良くないので、日常生活で身体活動を増やす工夫する。
● 高カロリーの食品を食べない
肥満のある人は、食事を見直して体重を減らすことで、健康増進の効果を得られる。加工食品を利用するときは、栄養表示ラベルを見ることが役立つ。
● 植物性の食品をとる
体重コントロールを改善するために、食品を選ぶことが大切。野菜や果物は低カロリーで、ビタミンやミネラルなど体に良い栄養成分が含まれる。逆に、加工肉や赤身肉はがんの発症を増やすので食べ過ぎに注意する。穀類は精製されていない全粒粉や玄米などが勧められる。
● アルコールに注意
アルコールの飲み過ぎはがんの発症を増やす。節度ある適度な飲酒量は1日平均純アルコールで20g程度で、これは「ビール中ビン1本」に相当する。飲酒後に顔が赤くなる「フラッシング反応」を起こす人は、これより飲酒量を少なくした方が良い。
「健康的な体重の維持」と「運動の習慣化」が大きく影響
調査に参加した人の調査開始時の年齢は50〜71歳で、がん既往歴のある人を除外した解析対象者は47万6,396人だった。期間中に7万3,784名がんを発症し、1万6,193名がんにより死亡した。がん発症までの期間は10.5年(中央値)で、がんによる死亡までの期間は12.6年(同)だった。
研究チームは、がんの予防効果を調べるために「がん予防ガイドライン」にどれくらい従っているかによって5つのグループに分けて解析を行なった。その結果、がんを含む全死因による死亡リスクは、もっとも順守度が高い男性では26%低くなり、女性では33%低くなった。
また、がんによる死亡リスクについては、もっとも順守度が高い男性は25%、女性は24%低くなった。がんの発症リスクについては、男性ではもっとも順守度が高いグループは、もっとも低いグループより10%低く、女性では19%低くなっていた。
がんの種類ごとにみると、胆のうがん(男女合わせて48%減)、肝臓がん(男性48%減、女性35%減)、直腸がん(男性40%減、女性36%減)などで、がんの発症が大きく減少することが確かめられた。
ACSのがん予防ガイドラインで推奨されている生活スタイルの項目ごとのリスクについても検討したところ、全死亡率の低下にもっとも大きく影響しているのは「健康的な体重の維持」と「運動の習慣化」であることが判明した。
「がん予防ガイドラインに沿った生活スタイルが、がん予防において大きな効果をもたらすことが明らかになりました。がんの種類によっては順守するほど予防効果が高まります」と、アルベルト アインシュタイン医学校のジェフリー カバト氏は述べている。
Sticking to Lifestyle Guidelines May Reduce Risk for Certain Cancers and for Overall Mortality(アルベルト アインシュタイン医学校 2015年1月7日)
American Cancer Society guidelines on nutrition and physical activity for cancer prevention(米国がん学会 2012年1月11日)
[ Terahata ]