多くの喫煙者は「たばこをやめたい」と考えているが、禁煙後に体重が増えるのを心配して、なかなか禁煙にふみきれないというケースも少なくない。そんな人に朗報だ。禁煙後の体重増加は、虚血性心疾患による死亡リスクを引き上げないという研究が発表された。
狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患は死因の上位を占める。虚血性心疾患とは、心臓の筋肉に血液をおくる動脈(冠状動脈)が狭くなったり、ふさがったりして、そこから先の心筋が酸素不足に陥る疾患だ。
糖尿病、脂質異常症、高血圧、喫煙、肥満、運動不足、ストレスなどが虚血性心疾患の原因になる。このなかで、もっとも深刻で、改善が可能な因子は喫煙だ。
「禁煙をすると、多くの人は体重が増加し、太りやすくなります。喫煙と肥満は両方とも、心疾患の危険因子です。しかし、禁煙がもたらす便益は、体重増加によるリスクを上回ることがあきらかになりました。この効果は、糖尿病のある人でも認められました」と、マサチューセッツ総合病院のジェームズ メグス博士(総合内科)は話す。
「もしあなたがたばこを吸うのなら、なるべく早く禁煙することをお勧めします。禁煙することで心疾患の危険性を大きく下げることができます。たとえ体重が増えたとしても、禁煙のメリットの方が勝るのです」(メグス博士)。
この研究は、心筋梗塞や脳卒中の効果的な予防策を調べるために行われている大規模研究である「フラミンガム心臓研究(Framingham Heart Study)」の一環として行われた。研究チームは、登録された3,251人の人々のデータを解析し、喫煙者や非喫煙者、最近になって禁煙した人の体重の変化や、虚血性心疾患の発症について調査した。
喫煙率は、研究の開始時には31%だったが、20年後には13%に低下していた。非喫煙者や禁煙してから4年以上たつ人の平均体重は平均して0.9kg増えていたが、禁煙してから4年以内の人の体重は2.3〜4.5kg増えていた。
禁煙がもたらす体重の変化を糖尿病の有無で比較したところ、糖尿病がない人では2.7kg、糖尿病のある人では3.6kg増えていた。
25年の追跡期間中に、631件の心血管イベントが確認されたが、禁煙した人では発症リスクが大きく低下することがわかった。
糖尿病のない人では、禁煙によって心疾患の発症リスクが低下することがあきらかになった。短期の禁煙で37%、長期の禁煙で68%、心疾患のリスクは低下していた。
糖尿病のある人でも、禁煙がもたらすメリットは明白だった。短期および長期の禁煙で60%、心疾患のリスクは低下していた。
「糖尿病の人は、狭心症や心筋梗塞になる割合が、糖尿病でない人の2倍以上になります。禁煙後の体重増加や肥満については、糖尿病の人ではとりわけ注意が必要です。しかし調査の結果、禁煙のもたらす便益は、糖尿病の人でも大きいことが分かりました。たばこをやめてからの期間が長いほど、禁煙のもたらす効果は強くあらわれます。たばこを吸う人は、迷うことなく禁煙した方が良いのです」と、メグス博士は強調している。
Weight gain after quitting smoking does not negate health benefits(マサチューセッツ総合病院 2013年3月12日)
[ Terahata ]