2月10日の「フットケアの日」を前に、日本フットケア学会、日本下肢救済・足病学会は、糖尿病神経障害や末梢動脈疾患(PAD)を要因とする足病診療の実態調査の結果を発表した。
年間1万人以上が下肢切断 放置例が多い
日本では、糖尿病などが原因で足病変が重症化し、下肢切断に至るケースが年間1万人以上に上る。その解決策を探るため、両学会が患者および医師を対象に調査を実施した。
調査では、末梢動脈疾患(PAD)の疑いがある症状で医療機関などを受診した人のうち、4人に1人の25.6%は重症下肢虚血(CLI)が疑われる症状になってからはじめて受診したということが判明した。また、CLIの疑いがある人のうち3割が医療機関などを受診したことがないと回答した。
足病変ハイリスク患者に対し定期的にフットケアを行っている腎臓内科・糖尿病内科の医師はともに4割であることもあきらかになった。また、CLIが発症要因の一つである足の潰瘍・壊疽に対して、診断・治療アルゴリズムを設定していると回答したのは全7診療科平均で1割だった。
日本フットケア学会理事長の小林修三先生(湘南鎌倉総合病院副院長)は、「慢性腎臓病、特に透析患者はPAD発症リスクが高いにもかかわらず、足病変の予防やスクリーニングの体制が十分ではなく、また、CLIの可能性がある段階ではじめて受診している人が少なくないことがあきらかとなりました」と述べている。
複数の診療科が連携して行う集学的治療が欠かせない
PADは、病態に応じた治療が必要となる。基礎疾患である糖尿病・透析のコントロールに加え、日ごろのフットケア、運動療法、血行再建術、虚血による壊疽・潰瘍部の治療、疼痛コントロール、感染コントロール、リハビリなど多岐に渡るため、単診療科で治療を完結させるのは難しい。
糖尿病やPADの増加を背景に、ここ数年、全国各地にフットケア・下肢救済に特化した専門外来が開設されつつある。血行再建治療(カテーテル治療やバイパス術)が進歩しており、足潰瘍・壊疽の治療は向上しているが、そのためには複数の診療科が連携して行う集学的治療が欠かせない。
調査では、PADやCLIの集学的治療のために連携を組んでいる医師は全7診療科で27.7%、「連携も組んでおらず紹介先もない」は12.0%(69/575人)という結果になった。
日本下肢救済・足病学会理事長の大浦武彦先生(褥瘡・創傷治癒研究所所長、北海道大学名誉教授)は、「下肢切断を回避するためには集学的治療が重要ですが、実際にはまだ連携が十分ではなく、集学的治療によって下肢救済の恩恵を受けている人はごく一部に限られていることがあきらかとなりました。下肢救済のためには、足病変の早期発見のための効果的なスクリーニング体制を整備するとともに、集学的治療のための連携体制を構築することが急務です」と述べている。
日本フットケア学会
日本下肢救済・足病学会
[ Terahata ]