糖尿病の人は、そうでない人にくらべ、聴力障害の発症リスクが最大で約3倍に増加するという新しい知見が発表された。「糖尿病の人は早い時期から聴覚障害の検診を受けたほうがよい」と研究者は述べている。
糖尿病の人に聴覚障害が多い理由は、加齢の影響だけではなく、血糖コントロールが不良であると全身の血管や神経の損傷が引き起こされることによって説明できるという。
この傾向は、年齢の低い人や、騒音の少ない環境で過ごすことの多い人でもみられた。糖尿病の人は聴力検査も受けることを研究者らは勧めている。
この研究は、新潟大学医学部血液・内分泌・代謝内科学講座の曽根博仁教授ら研究チームによるもので、米国内分泌学学会が発行する「Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism」に発表された。
糖尿病は、心臓病や網膜症、腎症、神経障害などさまざまな合併症を引きおこす。これらに加え聴覚障害とも関連がある、と研究者は指摘している。
「聴覚障害と糖尿病との関係が論争されていますが、高血糖は時間の経過とともに、蝸牛管血管条や神経にダメージを与え、聴力を奪っていくと考えられます。今回の研究では、糖尿病の人は聴覚障害の発症が2倍以上に増えることが示されました」と研究者は述べている。
研究チームは、合計2万194人(うち糖尿病患者7,377人)を含む13件の横断研究をメタ分析した。聴覚障害は、2kHz以上の周波数範囲を含む純音聴力検査法によって評価された。
ほぼすべての研究が、糖尿病と聴力障害の高い有病率との関連を示していた。糖尿病の人々は、糖尿病でない人々より、聴覚障害のリスクが2.15倍高いことが分かった。
加齢の影響を取り除いても、この影響は認められた。60歳未満の人々では、60歳以上の人々より、糖尿病と聴力障害の関連は強くなった。60歳未満の人々では、糖尿病は聴覚障害のリスクは2.61倍に上昇した。
「聴覚障害がうつ病や認知症などの発症に影響するおそれもあります。こららの予防の観点からも、糖尿病の人は早い時期から聴覚障害の検診を受けたほうがよいでしょう」と研究者は述べている。
New study finds hearing impairment in patients with diabetes is independent of aging or noisy environment(米国内分泌学学会 2012年11月14日)
[ Terahata ]