「慢性疾患対策の更なる充実に向けた検討会」が会合
厚生労働省は、慢性疾患の発症から合併症の予防に至る有効な方策を立案するため、「慢性疾患対策の更なる充実に向けた検討会」(座長:久道 茂・宮城県対がん協会会長)を立ち上げた。7月1日に第1回会合を、同月15日に第2回会合を開いた。
糖尿病や高血圧、心疾患、脳血管疾患などの「慢性疾患」は完治が難しいが、長期的な治療を続けることで合併症を予防できる。患者にとって慢性疾患をもちながら暮らしていくことは、人生を通じて大きな問題となっている。会合では「発症
予防から合併症対策まで、社会全体で取り組むための基盤をつくっていくことが必要」と確かめられた。
糖尿病の発症を予防、合併症に対策
糖尿病対策について、春日雅人・国立国際医療センター研究所長が、国、地方自治体、関係学会などの相互連携に課題があると指摘。「中核となる医療機関、都道府県、糖尿病対策推進会議、関係学会との連携により、
予防方法や治療方法に関し適切に情報を発信し、糖尿病患者や患者予備群の行動変容につなげることが重要」と述べ
た。
日本には、糖尿病有病者(糖尿病が強く疑われる人)が890万人いる。そのうち治療を受けているのは約250万人程度。日本医師会や日本糖尿病学会、日本糖尿病協会などが共同して2005年に「日本糖尿病対策推進会議」を立ち上げるなど、糖尿病対策を行っている。しかし、地域によっては「効率的・効果的な普及・啓発」「健診の受診率」「医療機関同士の連携」「治療中断率」「合併症予防」といった課題に対し
十分な対応ができていない現状がある。
糖尿病対策の課題
糖尿病医療の連携については、厚生労働省が糖尿病の医療体制のイメージを資料で提示。健診などによる糖尿病の早期発見から糖尿病治療につなげ、血糖コントロールの評価により「初期・安定期治療」「専門治療」「慢性合併症治療」「急性憎悪時治療」に分け、患者の状態に応じ、それぞれの機能をもつ診療所や病院が連携して治療を分担する連携体制を示し
た。
また、こうした連携が進められている地域の具体例として、島根県における糖尿病対策や、糖尿病地域連携クリティカルパスが機能している横浜市南西部の「戸塚糖尿病ネットワーク」の事例などを紹介し
た。
会合では、慢性疾患の発症や合併症への効果的な対策が必要という意見や、地域の住民が自ら病気の予防について自覚をもつことが重要との意見も出された。「糖尿病対策は結果が出るのに時間がかかる。小さな課題から一つひとつを解決していく姿勢が必要」「地域での住民参加の取り組みも重要。病気を発症してからの対応だけでなく、早くから食事の改善や運動を始めたり医療機関に行くなど、病気を
予防するための対策を地域で進めることが大切」といった意見が交換された。
第1回慢性疾患対策の更なる充実に向けた検討会(厚生労働省)
第2回慢性疾患対策の更なる充実に向けた検討会(厚生労働省)
[ Terahata ]