世界の糖尿病の人口は2007年の時点で2億4600万人、2025年には3億8000万人に増加する予測されている。糖尿病対策は世界的に喫緊の課題となっている。
糖尿病はアジアで爆発的に増えている
国際糖尿病連合(IDF)は、IDFに加盟する215の国や地域の糖尿病協会や学会などから得た糖尿病に関する統計情報を「糖尿病アトラス 第3版」にまとめ公表してい
る。
糖尿病有病数の世界トップ10*
(20歳-79歳)
それによると、2007年時点で成人の糖尿病有病率が高い地域は「東地中海・中東」(9.2%)、米国など「北米」(8.4%)、ドイツやロシアなど「欧州」(6.6%)、インドなど「南東アジア」(6.5)%だった。
日本が含まれる「西太平洋」は世界でもっとも人口の多い地域。13億の人口を抱える中国から5000人未満の太平洋の小さな島国まで39の国や地域がある。全体の糖尿病有病率は4.6%で、中東や北米、日本の6.4%に比べ低い。しかし、世界でもっとも糖尿病人口が増加しているのがこの地域だ。
IDFの発表によると、この地域の成人の総人口は14億7000万人で、世界の36%を占める。2025年には17億3000万人に増加すると予測されてい
る。糖尿病有病率は現在も上昇しており、2007年の4.6%から2025年には5.7%に上昇するとみられている。糖尿病有病数も6700万人から9940万人に増加する。
糖尿病は世界中で増加*
2007年(上段)、2025年(下段)
世界の糖尿病有病率の推定(20歳-79歳)*
2007年
2025年
東アジア、東南アジア、南アジア、中央アジア、西アジアを含めるアジア地域の糖尿病有病数は、2025年までに2億人を超える。
世界一の人口大国である中国では、特に糖尿病が爆発的に増える可能性がある。中国の2007年の糖尿病有病率は4.3%で地域平均に比べ特に高いわけではないが、都市化が進んでいる地域が有病率を引き上げ、有病数は3980万人から5930万人に増加すると予測されている。香港やシンガポールなど急速に経済が成長した国や地域でも糖尿病有病率は4.3%から5.6%に上昇す
る。
アジアの視点から糖尿病を治療・予防
西太平洋地域には日本、オーストラリア、香港、シンガポールなど1人当たりのGDPが高い豊かな国や地域がある一方で、3000米ドル未満の貧しい国や地域も多い。途上国では感染症の対策とともに、糖尿病の増加という新たな脅威と戦わなければならないが、経済・医療的な資源は限られている。
糖尿病と糖尿病合併症の治療のために毎年数千億米ドルの医療費が費やされ、糖尿病に関連するコストは世界人口より速く拡大している。しかし世界の多くの患者で糖尿病の発見と治療が遅れ、網膜症や腎症、心臓病、脳血管障害、足病変から起こる切断などの深刻な合併症が引き起こされている。
糖尿病は損失、死亡、失われた経済成長の原因になっている。もっとも効果的な対策は糖尿病を予防し早期発見・治療すること。糖尿病の一次
予防と、合併症の二次予防は糖尿病患者やその周辺にいる人々に恩恵をもたらすだけでなく、膨れ上がる医療費や社会的な損失を減らすことにもつながる。その影響は、
十分な治療を受けられない糖尿病患者が多い低所得や中所得の国でひときわ大きい。
国連は糖尿病を決議し、IDFの主導で11月14日の「世界糖尿病デー」を開催するなど、予防と治療の推進に向けた取り組みを進めている。IDFの各地域ごとに、その地域の実情に適した対策を推進する研究活動も始められた。
西太平洋地域に所属する国のうち日本や中国、韓国をはじめカンボジア、台湾などアジアの国や地域で糖尿病の研究、教育、治療の確立に向けた活動を行う「Asian Association for Study of Diabetes(AASD)」(清野裕理事長)が結成され、2009年5月に大阪国際会議場で開催された「第52回日本糖尿病学会年次学術集会」と同時開催で第1回年次学術集会が開催された。アジア人は遺伝的素因や病態が欧米と異なることや、アジアの視点から治療や合併症の予防法を検討し疫学調査を行うことが重要なことが確かめられ
た。
* 「Diabetes Atlas, 3rd Edition」(International Diabetes Federation、2006年)をもとに作成
世界糖尿病連合(IDF)
「糖尿病アトラス 第3版」(英語)(www.eatlas.idf.org.)
関連情報
糖尿病アジアネットワーク「ベトナムの糖尿病事情」(糖尿病NET)
[ Terahata ]