子供たちをとりまく居住空間、遊び、学校、通学、地域などの生活環境は、親世代の頃から大きく変化している。利便性や効率性が高くなった一方で、運動不足や体力低下のみられる子供が増えた。生活リズムも変わり、生活の夜型化、睡眠時間の減少傾向などが報告されている。
子供の肥満は親世代に比べ1.5倍から2倍
肥満傾向児の割合
肥満傾向の子供は増加している
文部科学省「学校保健統計調査」
食生活の欧米化にともない子供の体に変化が起きている。文部科学省の最近の調査では、肥満傾向児の割合は男子では9歳から17歳で10%を超えており、女子でも12歳が9.8%と高く、親世代に比べ1.5倍から2倍に増えたことが示された。子供の肥満の増加が話題になったのは20年ほど前のこと。肥満は子供の頃から始まっているという指摘もある。
日本では学校検尿の制度が確立されている。学校検尿は1973年の学校保健法改正により行われるようになり、すでに30年以上の歴史がある。92年からは尿糖検査も加えられ、糖尿病の多くは尿糖検査で発見できるようになった。尿糖陽性児の割合は0.1〜0.5%と低く、東京都や横浜市などの最近の調査によると、2型糖尿病の子供は減ってきている。
睡眠不足や睡眠障害、子供への影響
子供の生活リズムは年々夜型になっている。現代社会では活動が24時間化し、全般に生活は夜型化し、睡眠時間は減少する傾向にある。子供の生活が夜型になったのは大人の生活リズムに同調してのこととみられる。
日本小児保健協会が2000年に7364人を対象に実施した「幼児健康度調査」によると、「10時以降に就寝する」子供の割合は、1歳6ヵ月児で55%、2歳児で59%、3歳児で52%といずれも半数を超えている。1980年の調査ではいずれも25%、29%、22%と少なかった。
小・中・高校生の調査でも、以前の調査に比べ学年が進むにつれて就寝時刻が遅くなり、子供の生活の夜型化が進んでいる。東京都教育委員会が2002年に行った調査では、夜12時以降に就寝する児童・生徒の割合は中学校で26.9%、高校で66.6%だった。睡眠時間は年々短かくなり、「睡眠不足を感じる」「眠い」と答える割合も増加している。都市部で暮らす子供ほど就寝時刻と起床時刻が遅い傾向にある。
夜型化・睡眠時間の減少など子供の生活リズムの乱れは、成長の遅れ、注意や集中力の低下、眠気、易疲労感などをもたらすだけでなく、将来に2型糖尿病、高血圧、脂質異常症などの生活習慣病の発症につながるおそれがある。子供の肥満はそれ自体が心疾患のリスクを高める。食事や運動などの生活習慣を見直し、減量が必要となる。
子供の睡眠障害は睡眠時無呼吸症候群?
睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、寝ている間に何度も呼吸が止まったり(無呼吸)、気道の空気の流れが悪くなる疾患。眠っているつもりでも十分な睡眠がとれておらず、昼間に強い眠気が生じるなど日常生活を支障が出てくる。2型糖尿病や高血圧にも関連し、健康な人と比べ脳血管疾患・心臓疾患のリスクが高まる。このSASが子供でもみられるようになったという。
SASは成人の場合は「睡眠中に10秒以上の無呼吸が一晩に30回以上、1時間に5回以上繰り返される病気」などと定義される。主な症状はいびき、熟睡感がない、昼間の強い眠気、集中力の低下など。
大人では肥満が睡眠時無呼吸症候群の大きな原因となる。肥満は睡眠呼吸障害の原因となるだけではなく、メタボリックシンドロームの原因にもなる。子供では鼻炎や扁桃腺肥大、アデノイドが原因となることが多く、そうした子供では体型は痩型が多い。しかし、最近では肥満にともなう発症が増えてきているという。
財団法人日本学校保健会の調査研究委員会は2007年に1764人を対象に「睡眠と日常生活についてのアンケート調査」を行い、睡眠時無呼吸症候群の兆候のみられる子供がどのくらいいるのかを調べた。調査では、「イビキがある」群では「イビキはかかない」群と比べ、小学5年、6年では「学習意欲が不足しているみたいだ」と「落ち着きがない」といった回答が統計学的に有意に多い結果になった。
同委員会は今年2月に、子供のSASの知識を普及させるための小冊子「睡眠時無呼吸症候群について」を4万部作成、小学校などに配布している。「SASの兆候が見られたら、早めに医療機関にかかり、必要があれば治療を受けてほしい」としている。
参考サイト
・
平成19年度学校保健統計調査(文部科学省)
・
平成12年度幼児健康度調査報告(社団法人日本小児保健協会)
・
「児童・生徒の健康に関するアンケート調査」報告書(東京都教育委員会、平成14年度)
・
子供の睡眠に関する提言(社団法人日本小児保健協会学校保健委員会)
・
財団法人日本学校保健会
「睡眠時無呼吸症候群について」
[ Terahata ]