岡山大学の研究者などによる国際研究グループが、インスリンを分泌するヒトの膵臓の細胞を大量に作る技術開発に成功したと、米国の科学雑誌「Nature Biotechnology」電子版に発表した。マウスを使った動物実験で確認したもので、ヒトの体内で効果を確かめるためにはさらに研究が必要としながらも、今後のβ細胞を小さな容器に入れて体内に植え込む人工膵臓の開発などにつながる画期的な研究成果としている。
インスリンを産出するβ細胞が破壊される1型糖尿病では、β細胞を移植することが根治的な治療法となるが、提供するドナーが不足していることが障害になっており、これまでに行われた移植件数は多くはない。β細胞を作って患者に移植することができれば、脳死や心停止による臓器移植の代わりとなり、ドナー不足を補う画期的な治療法となる。
研究グループは、ヒトのβ細胞に寿命をのばす遺伝子組み換え操作をして大量に増殖させた。これまでヒトのβ細胞の大量増殖は困難とされてきたが、研究者らは多くのヒトのβ細胞を処理し分析することでこの問題を解決した。寿命を延ばす遺伝子組み換え操作をして大量に増殖させた上で、スクリーニング試験を行った。250以上の細胞の中で試験に合格したのは1例だけで、この細胞を用い多数の細胞を複製した。腫瘍を成形するおそれがあるので、寿命をのばす遺伝子を取り除くことも行った。
増やしたβ細胞は正常なβ細胞の約40%程度のインスリンを生成し、30週間以上にわたり糖尿病のマウスの血糖値が抑制された。一方で移植しなかった糖尿病マウスでは高血糖が続き、実験開始10週後までに大半が死んだという。
●詳細は「Nature Biotechnology」のサイトへ(英文・要約)
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