住環境が肥満の増大に影響している可能性があるという調査研究が、英国の研究者によって発表された。
肥満が虚血性心疾患、高血圧症、心筋梗塞、糖尿病などの発症リスクを増大させることが知られており、世界中で問題になっている。肥満の大きな原因は、エネルギー摂取量(食事)とエネルギー消費量(身体活動)のバランスが乱れることで、肥満対策として、食事で適正なエネルギー量と過不足のない栄養素をとることが重要とされる。しかし調査では、住環境も見逃せない要因であり、運動を良好に行えない住環境では肥満者が増える可能性があることが示された
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調査は英国の研究者により欧州8カ国(フランス、ドイツ、スロバキア、ハンガリー、ポルトガル、イタリア、スイス、リトアニア)の都市で2002年から2003年にかけて、成人6,919人を対象に実施された。結果はBritish Medical Journal電子版に発表された
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住環境が身体活動量や健康状態に影響を及ぼす可能性について、これまでも指摘されていたが、身体活動量との関連を評価する指標を用いた調査はあまり行われていなかった。調査では、樹緑が多く落書きやゴミが少ない住環境ほど運動をしやすく、肥満に影響するとする仮説に基づき、身体活動量を2段階(ほとんどしない/よくする)、住環境を5段階に分けて評価を行った。食事によるエネルギー摂取量については調査しなかった。
調査結果の分析によると、樹緑が多く運動をするのに好ましい住環境に住む人は、身体活動の活発さが3倍高く、肥満の割合も約40%低かった。一方で、住環境に緑が少なく落書きやゴミが多い人は、身体活動が約50%少なくなり、肥満の割合が約50%高かった。
調査報告では、運動を促進し体重を減らすために、住環境の整備にも注意を払う必要があると指摘されている。
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詳細は「British Medical Journal」のサイトへ
[ Terahata ]