日本糖尿病・妊娠学会が軌道にのるまでの思い
東京女子医科大学名誉教授
初代理事長、現名誉理事長
大森 安恵
安産ですよと言われながら死産に終わった自分自身の喪失の悲嘆と、糖尿病が発見され死産をしたという苦悩のどん底にいる二人の患者さんとの出会いが動機となって「糖尿病と妊娠」の臨床と研究分野を立ち上げる決心をした。昭和37年、1962年のことである。
当時の上司・中山光重教授が貸して下さったLars Hagbardの「Pregnancy and Diabetes Mellitus」がバイブルであった。死に物狂いで学習、修練を積み、留学の帰途、コペンハーゲン大学のJørgen Pedersen教授に回り会い,Diabetic Pregnancy Study Group(DPSG)で毎年発表の機会を得たことは幸運であった。
我が国に「糖尿病と妊娠に関する研究会」を池田義雄、松岡健平両先生とともに作った時もこのヨーロッパ糖尿病学会のDPSGが大いに参考になった。糖尿病があっても妊娠、出産は可能であるということを社会的に広めてくれたのは前立教女子短期大学学長・若林一美氏始めジャーナリストの力は大きかった。
一方、三重大学妊娠グループ、長崎大学妊娠グループ、東京女子医科大学妊娠グループなどの強力な研究、臨床活動は会の発展に大きな刺激を与えたと言える。また学会誌、会報の定期的な出版に携わった編集長、創新社、知人社の協力的なご支援には心から御礼申し上げたい。
(2019年11月)
2021年06月 更新