一般社団法人 日本糖尿病・妊娠学会

会報 1999 November Vol.1 No.1

【巻頭言】
研究会を学会にして妊娠時の糖代謝異常から母児を守ろう

日本糖尿病・妊娠学会 会長
大森 安恵
東京女子医科大学名誉教授

 昭和60年、『糖尿病と妊娠に関する研究会』を設立し、第1回年次大会を同年12月に東京で開催した。アイデアマンである池田義雄先生の「日本にもそろそろ糖尿病と妊娠の研究会をつくらなければならないのではないですか」という一声が起爆剤になって、すぐに設立されたのである。

 それは、『糖尿病学の進歩』などの卒後教育のテーマに妊娠が取り上げられるようになり、糖尿病の妊娠例が増えてきたことと、血糖自己測定の研究会など、糖尿病に関する勉強会が数を増してきたことなど、研究会をつくる機はまさに熟していたのである。

 ヨーロッパ糖尿病学会(EASD)に属する Diabetic Pregnancy Study Group (DPSG) が、ちょうど J.Hoet、J.Pedersen、J.Stowers の三教授が偶然一堂に会し、設立の機を持ったように、池田、松岡両先生と大森の三人が平田幸正先生の御声援を得て開始した次第である。

 第一回は大森が担当し、IDF の President-elect であった Hoet 先生を特別講演に迎え、約300名の参加者を得て盛会裡に発足の途につくことができた。それからはや15年が経過し、今年は第15回の研究会をめでたく迎えている。

 ヨーロッパ糖尿病学会の糖尿病と妊娠に関する研究会は、完全なメンバー制の closed の会で、専門家60名のみの会であるが、わが国では、糖代謝異常の危険から母児を守ることを日本中に普及させたいという念願を込めて、会員制にせずオープンシステムにした。研究会に関与した産科、小児科、内科、眼科の諸先生、コメディカルの方々の多大な努力によって、関与している人々の病院機関では、12%もあった周産期死亡率は2%にまで低下する好成績を見せるようになった。

 しかし一方、妊娠初期の悪コントロールを反映する新生児の奇形率が、依然として6〜7%から低下しないことや、いまだに糖尿病を理由に人工流産させられるといった恐るべき事実がどうしても解消されない大きな問題を抱えている。

 わが国の糖尿病は95%を2型糖尿病が占め、10代の若年発症糖尿病といえども、2型糖尿病であるという特徴を持つ。2型糖尿病は、症状がないため、診断を受けることなく放置され、網膜症や腎症などの細小血管合併症を持った糖尿病が、妊娠によって初めて発見されるとか、すでに糖尿病のある人でも、妊娠してから血糖コントロールを始めたり、網膜症や腎症の存在をチェックすることなく妊娠してしまう症例が、まだかなり多い。つまり、計画妊娠の知識がまだまだ一般の糖尿病患者の間にも、医療者の中にも普及していないという問題点も指摘される。これらの問題を解決するためには、研究会を学会に切り替えて、活動を広く大きく拡大すべきではないかと、2、3年前から考え始め、幹事の皆様のご協力を得てきた。

 研究会を学会化するためには、いくつかの条件を満たさなければならない。その最も基本的な条件の一つがこのニューズレターの発行と会員制の確立である。来年には、第1回の糖尿病妊娠学会が開催できるよう鋭意準備中である。学会化に向け、皆様の心からなるご協力をお願いする次第である。

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