一般社団法人 日本糖尿病・妊娠学会

妊娠糖尿病既往女性のフォローアップで産後12週以降の糖負荷試験とHbA1c測定が可能に:内閣府が指定した「デジタル田園健康特区」での岡山大学産婦人科の取り組みが成果

2023年09月19日

 岡山大学産婦人科が、内閣府が指定した「デジタル田園健康特区(岡山県吉備中央町、2022年4月、採択・指定)」として取り組んできた「妊娠糖尿病既往の産後女性のフォローアップ」事業が評価され、同特区の規制改革提案の第一号として、本年8月30日付で厚生労働省より、産後12週以降「血糖測定等により医学的に糖尿病が疑われる場合、算定可」という疑義解釈通知が全国の地方厚生局に発出されました。岡山大学産婦人科が同特区で推進してきた母子健康促進事業規制改革案件である「妊婦健診を踏まえた予防医療の実現と産後ケアの充実」のための包括的な妊娠糖尿病の産後フォローアップの取り組みが評価されたものです。

 「妊娠糖尿病に罹患した女性が将来、糖尿病になるリスクを予防するだけでなく、次の妊娠を望む上でのプレコンセプションケアの一環となるのみならず、将来の医療費削減につながる可能性が高いと考えられ、今回の取り組みは大変意義のある通知」であると、岡山大学のプレスリリースで述べられています。

 一方、日本糖尿病・妊娠学会では、本年公開予定の「妊娠糖尿病既往女性のフォローアップに関する診療ガイドライン」で、産後の耐糖能異常の評価時期とその方法について下記の推奨を行っています。

(1)妊娠糖尿病既往の女性において産後6~12週に糖代謝異常評価のために75gOGTTを行うことを強く推奨する。
(2)妊娠糖尿病既往の女性において産後6~12週に糖尿病と診断されなかった場合、以降も定期的に糖代謝異常の評価を行うことを強く推奨する。

 しかしながら、「産後12週までに糖尿病が疑われる場合は、管理料算定がすでに可能ですが、(中略)産後12週以降は一見すると値が正常化してしまうため、病名を付けても、精密検査は、上述したように算定外とされてしまう地域・ケースが多数認められており、地域差が生じて」(岡山大プレスリリース)いる点が診療上の大きなハードルとなっていました。

 今回の厚労省の疑義解釈通知は、産後12週以降の糖負荷試験とHbA1c測定が可能であることを明示しており、糖尿病の早期発見と次回妊娠時の胎児形態異常の予防のためのプレコンセプション・ケアに大いに貢献するものです。さらには、妊娠を契機とした生涯にわたる女性のヘルス・プロモーションの一環として、糖尿病やメタボリックシンドロームの発症予防(あるいは早期診断)による医療費削減に寄与するものと期待されます。

 皆様には、今回の疑義解釈通知を確認の上、適切に利用いただければと存じます。


資料
岡山大学プレスリリース「デジタル田園健康特区 吉備中央町 規制緩和提案達成 第1号 妊娠糖尿病妊婦の産後フォローの明確化「妊婦健診を踏まえた予防的介入検査の実現と産後ケアの充実」
https://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id1133.html

厚生労働省:疑義解釈資料の送付について(その56)(令和5年8月30日付事務連絡))
https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/kyushu/iryo_shido/000289332.pdf

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