一般社団法人 日本糖尿病・妊娠学会

日本糖尿病・妊娠学会の歴史をふり返る
―2005~2011年を中心として―  


恩賜財団母子愛育会総合母子保健センター所長
第2代理事長 中林正雄

  1. 本学会が16回の研究会を経て学会へ名称変更したのは2000年12月であり、2001年1月には機関誌「糖尿病と妊娠」1巻1号が発行されました。その年の12月1日(土)、2日(日)に第17回日本糖尿病・妊娠学会(東京プリンスホテル)を私が担当させていただきました。初代理事長の大森安恵先生からは「学会になって初めての記念すべき学術集会ですから、かんばって下さい。」と激励されました。学会当日、12月1日に当時の皇太子妃殿下雅子さまがご出産され、愛子内親王さまがご誕生されました。会場の皆様にニュースとしてお伝えしたことを良く記憶しています。

  2. 2005年4月に初代理事長として本学会の基礎を築かれ、偉大な研究者であり、カリスマ的指導者である大森安恵先生の後を受けて、私が理事長をおおせつかりました。大森先生の後任などとても務まるところではなく、私としては外野手が急にピッチャーとしてマウンドに上がるような気分でした。

  3. 2006年9月6日に秋篠宮紀子妃殿下が愛育病院でご出席され、悠仁親王さまがご誕生されました。私は大役を無事果たすことが出来て安堵していたところ、本会名誉会員であり私の尊敬する恩師である坂元正一先生が、その年の12月に突然ご逝去されました。まさに"巨星墜つ"の感じでした。坂元正一先生の追悼文を本学会の機関誌7巻1号(2007年)に掲載させていただきました。

  4. 大森安恵先生の悲願として私達が引き継いだ理念は"糖尿病から母子を守ろう"でした。女性が糖尿病に気づかずに妊娠した場合の悲劇はご存知の通りです。しかし若い女性のための糖尿病スクリーニングの普及はなかなか困難です。
    そこで2008年、日本赤十字社の近衞 忠煇社長(当時)に直接お会いして、献血者全員に糖尿病スクリーニングを行っていただくようお願いしました。その結果、近衞社長はじめ日赤血液事業本部の皆様のご理解とご尽力により、2009年3月から献血時の検査項目に、グリコアルブミン(GA)検査が追加されました。日赤血液センターでは年間500万件の献血がありますので、若い女性の耐糖能異常のスクリーニングとして一定の役割を果たしていると考えます。

  5. 2009年には学会内にGDM診断基準検討委員会(平松祐司委員長)を設置しました。その背景には、2008年に発表されたHAPO(Hyperglycemia and Adverse Pregnancy Outcome )Studyがあり、2010年に世界糖尿病妊娠学会(IADPSG)はHAPO studyに基づいて世界統一のGDM診断基準を提唱しました。この提唱を受けて本学会はわが国におけるGDM診断基準の改定を行い、関連学会の承認を経て、2010年7月より新診断基準が施行されました。 このGDM診断基準の改定はこの領域の医療関係者に大きなインパクトを与え、これ以降、GDMに関する研究が急速に活性化したように思われます。

  6. 2011年4月、2期6年間の理事長の重責を果たし、平松祐司新理事長に無事にバトンを渡すことが出来ました。皆様のご協力に心から感謝をしています。

2021年06月 更新

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