DCCT
[ DCCT ]
アメリカで1型糖尿病の人を対象に行われた調査研究。それまで標準的に行われていた注射回数が1日2回以下のインスリン療法を行う「従来療法群」と、1日3回以上注射する「強化療法群」で、合併症の起きやすさに差があるかを調べたもの。結果は、強化療法群のほうが明らかに細小血管障害(網膜症や腎症などの糖尿病の特徴的な合併症)が少なく、血糖コントロールも良好に保てるというものでした。この結果は、糖尿病の治療でよりよい血糖コントロールをめざすという今日の治療方針の確立に、強い影響を及ぼしました。
DCCT が終了したあと、同じ患者さんを引き続き経過観察する EDIC という研究が行われました。DCCT 終了によって、強化療法群と従来療法群の間に生じていた血糖コントロール状態の差はなくなりましたが、細小血管障害の起きやすさは平均11年経過した後も、旧強化療法群で抑制されていました。また、DCCT 終了時点では差がなかった大血管障害(動脈硬化性疾患)も、旧強化療法群のほうが少なくなっていました。このことは、厳格な血糖コントロールの効果はその期間中ばかりでなく長期的にもよい影響をもたらし、とくに大血管障害については徐々にその効果が現れてくることを示しています。反対に、血糖コントロールがよくない状態が長く続くと、その穴埋めが大変なことがわかりました。DCCT/EDIC の研究者はこれを「メタボリックメモリー」と名付けています。