「喉が渇きやすくなった」「水を大量に飲む」「尿の量が増えた」「体重が急に減った」――これは糖尿病の警告サインだ。子どもをもつ親の5人に4人は、糖尿病の警告サインについて知らないことが、国際糖尿病連合(IDF)の調査で明らかになった。IDFは、11月14日の世界糖尿病デーに合わせて、この調査の結果を発表した。
5人に4人が「糖尿病の警告サイン」を知らない
11月14日の世界糖尿病デーは、国際糖尿病連合(IDF)などにより1991年に開始され、2006年には世界保健機関(WHO)の公式の日となった。この日に糖尿病の啓発が世界規模で展開される。
IDFは世界糖尿病デーに合わせて、糖尿病についての意識調査を行った。調査は、米国、ブラジル、中国、インド、南アフリカ、トルコに在住している18〜65歳の男女7,000人を対象に実施され、うち46%は18歳未満の子どもを1人以上もっている親だった。
世界の糖尿病人口は爆発的に増え続けており、2017年現在で糖尿病有病者数は4億2,500万人に上る。20〜79歳の成人の糖尿病有病率は8.8%で、11人に1人が糖尿病有病者と推定されている。
糖尿病は罹病期間の長い慢性疾患で、発症するとほとんどの場合で一生付き合うことになる。調査では、家族が糖尿病であるという人は多く、糖尿病への関心が深く、とくに自分の子どもについて気にしている人が多いことが示された。
家族の健康に関心をもつ人の多くが「糖尿病の警告サインについてもっとよく知りたい」と望んでいることも分かった。実際には、子どもをもつ親の5人に4人が十分な知識をもっておらず、3人に1人はまったく知らないという結果になった。
「糖尿病の警告サイン」とは
糖尿病は初期に段階では自覚症状が乏しい疾患だ。しかし、血糖値が高い状態が続くと、糖尿病の警告サインあらわれる。
それは、▼口や喉が渇く、▼水や清涼飲料を大量に飲む、▼排尿の頻度が増え、尿の量が増える、▼体重が減少する、▼疲労を感じやすくなる、▼目がかすむ、視力が低下する、▼手や足にしびれを感じる、▼歩くと下肢が痛む、▼勃起できなくなる――といったことだ。
「糖尿病の警告サインを見逃していけません。糖尿病の治療を開始するのは早いほどいいのです。少しでも体の不調を感じたら、医療機関で尿検査や血液検査を受けるべきです」と、IDF理事長のナム チョウ・ソウル国立大学教授は言う。
糖尿病を治療しないでいたり、適切な治療を受けられないでいると、深刻な合併症が引き起こされ、生活の質は大きく低下する。糖尿病は失明、足の切断、腎不全、心臓病、脳卒中などの原因になる。2017年には糖尿病が原因で、世界で400万人が死亡した。
早期発見し治療を開始すれば恐い病気ではない
「糖尿病の警告サインについて、すべての人が理解することが望ましいのです。見逃してしまうと、糖尿病がかなり進行した段階で診断されるようになり、その間に糖尿病の合併症が進行してしまいます。小児の糖尿病については、とくに見逃されやすいので、注意が必要です」と、IDFのチョウ理事長は言う。
「糖尿病は早期発見し適切な治療を開始すれば、決して恐い病気ではありません。しかし現実には2型糖尿病では、発症してから数年を経てようやく治療を開始するケースが多くあります。治療が開始遅れたり、中断してしまうと、血管は取り返しのつかないダメージを受け、糖尿病合併症を発症しやすくなります」と、チョウ理事長は強調する。
「1型糖尿病の患者さんは、発症したらただちに治療を始めないと、生命を維持できなくなります。しかし現実には、とくに途上国では1型糖尿病の治療を受けられない患者さんが多くいます」。
現実には、世界で有病者の2人に1人(2億1,200万)が糖尿病と診断されていない。医療機関などで定期的な検査を受けることが、糖尿病を早期発見するために必要だ。
糖尿病の対する意識を変える
1型糖尿病の子どもの母親であるジュリエッタ ラウダニさんはアルゼンチンに在住している。子どものフランちゃんは生後18ヵ月で1型糖尿病を発症した。最初にあらわれた症状は多尿だったが、それが糖尿病によるものであることがラウダニさんには分からなかった。フランちゃんのおむつを8回続けて変えたときに、ようやく1型糖尿病であることが分かった。
ラウダニさんは、多くの子どもをもつ親と同じように、乳児が糖尿病を発症することがあると知らなかった。最初に診せた医師ですら、最初は尿感染症を疑った。
1型糖尿病は、主に自己免疫を基礎とした膵β細胞の破壊によって発症する疾患だ。過食や運動不足といった生活習慣と関係がなく、肥満とも関係がない。「1型糖尿病」「2型糖尿病」という診断名が定着する以前は「小児型糖尿病」「成人型糖尿病」といった呼称が使われており、小児が糖尿病を発症するのは稀なことだと考えられていた。
フランちゃんが糖尿病と診断されたときラウダニさんはショックを受けたという。「糖尿病は高齢者に多い病気だと思っていました。子どもが発症するという知識をもっていませんでした。フランは意識がはっきりしていて、脱水状態にもなりませんでした」と、ラウダニさんは語る。
「フランの糖尿病の療養を支えるために、いろいろなことを覚えました。いまでは糖尿病についてよく分かっていると思う。糖尿病の対する意識を変えていくのは、すばらしいことです」。
世界糖尿病デー(世界糖尿病デー実行委員会)
世界糖尿病デー(World Diabetes Day)
国際糖尿病連合(IDF)
[ Terahata ]