世界長寿国ランキングで2040年までに日本は2位に転落し、スペインがトップになるという予測結果が発表された。
生活習慣改善により予防できるNCD
研究は、ワシントン大学健康指標評価研究所(IHME)によるもので、医学誌「ランセット」に発表された。
WHO(世界保健機関)は、がん・糖尿病・循環器疾患・呼吸器疾患など、生活習慣の改善により予防・改善が可能な疾患をまとめて「非感染性疾患(NCD)」として位置付けている。これらは、不健康な食事や運動不足、喫煙、過度の飲酒などの原因が共通している。
現在の早期の死亡の原因になる疾患のトップ10は、(1)虚血性心疾患、(2)脳卒中、(3)COPD、(5)アルツハイマー病、(4)慢性腎臓病、(5)下気道感染症、(6)肺がん、(7)下痢症、(8)糖尿病、(9)交通事故、(10)結核。
NCDが占める数はトップ10のうち4つだが、2040年には8つに増えると予測されている。新たに高血圧性心疾患、肝臓がんなどが上位に入ってくる。
関連情報
長寿国ランキング 日本は2040年に2位に転落
高血圧、高血糖、肥満、喫煙、アルコール、大気汚染などの改善に取り組むことが健康に大きな影響をもたらす。
たとえば中国は、2016年の平均寿命は76.3歳(68位)だが、現在の健康トレンドが続くと寿命は5.6年延び、2040年には81.9歳(39位)に改善する。
それとは反対に、米国の2016年の平均寿命は78.7歳(43位)だが、2040年に寿命は1.1年延びるものの、80.8歳(64位)と順位を落とす。
英国は、2016年の80.8歳(26位)から2040年83.3歳(23位)へと順位が少し上がる。
日本は2016年の長寿国ランキングでトップ(平均寿命83.7歳)だが、2040年にはスペインが85.8歳に迫って日本を抜き、日本は2位に転落する見通しだ。
健康の未来は変えられる
各国の健康の未来は決められたものではなく、健康増進を阻むリスク要因、教育水準、1人当たりの収入などの条件によっても変わっていく。
「各国の保健政策がどれだけ健康増進のために有効に機能できるかで、20年後の予想は変わっていきます。良いシナリオがあれば進展し、悪いシナリオであれば停滞します。保健政策をどれだけ充実させるかで未来は変えられるのです」と、ワシントン大学健康指標評価研究所(IHME)のクリストファー マレー所長は言う。
マレー所長によると、健康増進のために改善が必要なトップ5項目は、(1)高血圧、(2)喫煙、(3)高血糖、(4)BMI(体格指数)、(5)アルコールだ。
また6番目に、中国だけで年間100万人の命を奪っていると専門家が指摘している大気汚染が挙げられている。
食事の改善と肥満の減少、喫煙率の低下は、各国の保健政策がすぐに取り掛からなければならない課題だ。「スペインは食事と肥満に関して優れています。一方、日本は医療制度が優れていますが、喫煙率が高く、男性の肥満率も上昇しています」という。
社会格差が健康を左右する
2040年に平均寿命が長いと予測される国のランキングは以下の通り。
(1)スペイン(2016年の平均寿命 82.9歳→2040年の平均寿命 85.8歳)
(2)日本(同83.7歳→同85.7歳)
(3)シンガポール(同83.3歳→同85.4歳)
(4)スイス(同83.3歳→同85.2歳)
(5)ポルトガル(同81.0歳→同84.5歳)
(6)イタリア(同82.3歳→同84.5歳)
(7)イスラエル(同82.1歳→同84.4歳)
(8)フランス(同82.3歳→同84.3歳)
(9)ルクセンブルク(同82.2歳→同84.1歳)
(10)オーストラリア(同82.5歳→同84.1歳)
現在よりもランクが下がる国は、カナダ(17位→27位)、ノルウェー(12位→20位)、オーストラリア(5位→10位)、メキシコ(69位→87位)、台湾(35位→42位)などだ。
収入や教育年数などの格差も健康を左右する大きな要因になる。これらの格差の大きい国では、平均寿命も伸び悩む傾向があるという。
「多くの国で社会格差の拡大は問題になっています。低い所得しか得られないで、教育もあまり受けられないと、寿命を延ばすことができません。こうした格差は依然として残るでしょう」と、マレー所長は言う。
「2040年までに各国の平均寿命の差が予測よりも縮まり、不平等が改善されることを期待しています」としている。
New health forecasting study: In 'worse' scenario, half of all nations could face lower life expectancies(Institute for Health Metrics and Evaluation 2018年10月16日)
Forecasting life expectancy, years of life lost, and all-cause and cause-specific mortality for 250 causes of death: reference and alternative scenarios for 2016-40 for 195 countries and territories(Lancet 2018年10月16日)
[ Terahata ]