歯周病の治療を積極的に行うと、糖尿病の治療も改善することが英国の研究で判明した。血糖値を下げ、慢性炎症を減らすことで、心血管疾患や腎臓病のリスクも減らせるという。
歯周病は「糖尿病の合併症」
歯周病は「糖尿病の第8の合併症」といわれる。歯周病の有病率は英国成人の50〜90%に上り、糖尿病のある人ではとくに歯周病の発症リスクが高い。
歯周病菌が原因で、口腔内の細菌のバランスが崩れると、歯周病は急速に進行する。すると、歯周病菌は体内で炎症を引き起こし、それがインスリンの効きが悪くなるインスリン抵抗性につながる。糖尿病治療の鍵となるのは、いかにインスリン抵抗性を防ぐかだ。
今回の研究は、歯周病の治療をすることが、糖尿病のコントロールにおいても実質的な利益をもたらすことを示した、はじめての長期的なランダム化比較試験だ。
この研究は、英国糖尿病学会(Diabetes UK)とユニヴァーシティ カレッジ ロンドン イーストマン歯科医学研究所が資金提供して実施された。
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歯周病の治療をすると血糖コントロールが改善
研究チームは、歯周病を治療し、慢性炎症を抑えることで、2型糖尿病の人の血糖コントロールを改善できるかを調べた。
研究には、血糖コントロールが不良で、歯周炎が起きている糖尿病患者264人が参加した。
試験は12ヵ月行われ、従来の2型糖尿病の治療を続けながら、半分を歯周病の積極的な治療を受けるグループ、もう半分を標準的な治療を受けるグループに分けた。
両群とも、歯周病などの原因となる歯石を取り除く歯石除去(スケーリング)と歯面研磨(ポリッシング)の処置を受けた。
積極的な治療を受けた群ではそれに加えて、3ヵ月ごとに歯周ポケットを徹底的に洗浄し、必要に応じて薬で炎症を抑え、歯肉や歯根の外科手術も行った。プラークが蓄積しないように、歯磨きや歯間ブラシの使い方などの講習も受けた。
研究開始時の参加者のHbA1cの平均は8.1%。12ヵ月後、歯周病の積極的な治療を受けた患者では7.8%に改善し、従来治療群では8.3%だった。
歯周病の積極的な治療を受けた患者は、HbA1cが平均して0.6%、より低下していた。歯周病を積極的に治療することで、血糖コントロールは改善することが示された。
また、慢性的な炎症も減少していた。これにより、心臓病、脳卒中、腎臓病などの深刻な糖尿病合併症のリスクを下げることができる。
歯周病治療で全身の慢性炎症も抑制
「歯周病は糖尿病に密接に関わっており、高血糖だけでなく、全身の慢性炎症も引き起こすことが知られています。これらが長期にわたり続くと、血管はダメージを受け、腎臓病などの合併症のリスクが上昇します」と、フランチェスコ デエィウト・ユニヴァーシティ カレッジ ロンドン イーストマン歯科医学研究所教授は言う。
「血糖値を下げる糖尿病のお薬は2剤以上を使うことが多いのですが、HbA1cを0.6%下げられたということは、糖尿病の薬を2剤処方したのと同程度の効果を得られたことを意味します」と、デエィウト教授は指摘する。
「歯周病の積極的な治療を受けたグループの健康が改善し、生活の質が向上したのは、大変に喜ばしいことです。糖尿病と歯周病は関連があることはこれまでも指摘されていました。今回の研究はそれを強力に指示するものです」と、歯科責任者のサラ ハーレー氏は言う。
「2型糖尿病の治療を受けている人が、治療の一部として口腔ケアについてのアドバイスを受けることは一般的に少ないのが現状です。今回の研究は、歯周病の治療などの口腔ケアが、糖尿病の治療の観点からも不可欠であることを示唆しています。糖尿病ともに生きる人が口の中の健康にも気を配ることが、潜在的ベネフィットをもたらします」。
研究者らは、糖尿病の治療と歯科の治療を並行して行うことが重要であり、標準的な治療として取り入れる必要性があることを、糖尿病治療に携わる医療者に認知してもらうための働きかけを、英国の国民保健サービス(NHS)と共同で行っているという。
研究チームは現在、心臓病や脳卒中のリスクの高い患者に対しても歯周病の治療は効果的がどうかを調べる大規模な研究を計画している。
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[ Terahata ]