筑波大学は、内臓脂肪を「断面積」ではなく「体積」によって評価する技術を開発したと発表した。この技術を使った家庭用の体組成計が12月上旬に発売される。
内臓脂肪を「体積」によって評価する技術を開発
筑波大学は、内臓脂肪を「体積」によって評価する技術を開発したと発表した。従来はへそ位置での「面積」によって評価していたが、新しい技術により、より高い精度で内臓脂肪を計測できるようになるという。
この研究は、筑波大学体育系の田中喜代次教授、辻本健彦特任助教らの研究グループが、エレコム、THF(筑波大学発研究成果活用企業)と共同で行ったもの。この技術を家庭用にはじめて搭載した家庭用体組成計は、12月上旬にエレコムから発売される。
筑波大学の研究チームが開発したのは、内臓脂肪体積をCTやMRIなどの高価な機器を用いることなく推定できるシステム(推定式)。
「内臓脂肪」の量をはかるために、臨床では1枚のCT腹部断面画像によって「内臓脂肪面積」を算出するほか、腹囲を測定するのが一般的だが、そもそも理想的なのは内臓脂肪の体積を算出する方法だ。
そこで、研究チームは最大24枚の連続した腹部MRI画像から内臓脂肪体積を算出し、それを非侵襲的な方法で推定できるシステムを開発した。
MRIには、CTとは異なりX線を使用しないため、複数枚の撮影をおこなっても人体に悪影響をもたらさない(被爆の心配がない)という利点がある。一方で、検査機器は高価であり、医療用機器でもあるので、一般的な利用が難しいという課題もある。
内臓脂肪をよりより正確にはかれる家庭用体組成計を発売
研究チームは体脂肪率や骨格筋率(体重に占める筋肉量の割合)などを、骨密度などの体組成を評価する上で精度が高いとされる「二重エネルギーX線吸収法」を用いて評価し、それらの値を基準とした新たな推定式を作成するのに成功した。
このシステムを家庭用体組成計にはじめて採用し、より正確な内臓脂肪レベルの評価が可能にした。
体組成(内臓脂肪レベル、体脂肪率など)の推定には、身体に微弱な電流を印加し、電流が流れる際の抵抗値を利用する方法(生体電気インピーダンス法)を採用。
研究グループは、20~70歳の男女を対象に試験を行った。対象者は、性別や年齢層、体格を考慮して募集された。生体電気インピーダンス法による抵抗値より、内臓脂肪レベルおよび体組成を推定できるかを検証した。
内臓脂肪体積の評価に際しては、MRIを用いて、腹部を1cm厚、1cm間隔で断面画像撮影、腹腔内脂肪の下端から上端まで(最大で24枚)を積算した。その他に、体脂肪率や骨格筋率、骨塩量は、二重エネルギーX線吸収法を用いて測定。
身体の抵抗値は、体重計型の4端子法による抵抗値測定器を用いて測定した。これらのデータから多変量解析を用いて、内臓脂肪レベルと体組成指標を推定する式を作成した。
その結果、内臓脂肪レベルにおいてはr=0.8以上の高い相関を持つ推定式が得られ、その他の体組成指標においても良好な精度を有する推定式が見出された。
こうして、これらの「推定式」を搭載した家庭用体組成計の開発・販売が実現した。
製品は「HELLO 体組成計」(HCS-FS01シリーズ)。体重、内臓脂肪レベル、BMI、体脂肪率、骨格筋率、骨量、基礎代謝の7項目が測定できる。体重の変化が詳細に把握できるように、50g単位の精密な測定が可能だ。
無料の専用アプリを使ってスマートフォンやタブレットで、過去のデータを含めて管理することもできる。
筑波大学体育系
[ Terahata ]