増え続ける糖尿病に対策するため、栃木県が糖尿病対策に本腰を据える。「栃木県糖尿病重症化予防プログラム」(仮称)を年内に策定することを決めた。
糖尿病重症化予防プログラムを策定
栃木県の人口10万人あたりの患者数は2,800人弱で全国平均よりも1割多い。糖尿病腎症が重症化し、透析療法を開始する患者は年間に250人を超えている。
県は「糖尿病予防推進協議会」を7月25日に開催し、2017年4月から実施する「栃木県糖尿病重症化予防プログラム」(仮称)を年内に策定することを決めた。
行政、医療機関、保険組合などが連携を強化し、糖尿病合併症リスクの高い人を抽出し、受診勧奨や保健指導を行う。
プログラムでは特定健診受診者のレセプト(診療報酬明細書)と、健診データの空腹時血糖やHbA1c値などを突き合わせ、糖尿病や糖尿病性腎症、透析になるリスクの高い対象者を抽出する。
その後、企業の健康保険組合や国民健康保険を運営する市町などが、それぞれの対象者に受診勧奨や保健指導を行い症状の悪化を防ぐ。
県保険者協議会は、中小企業などの従業員と家族が加入する全国健康保険協会(協会けんぽ)、大企業の健康保険組合などで構成されている。
このほど協議会に、栃木県保険者協議会、経営者団体の栃木県経営者協会が新たに参加することが決まった。企業や健保を連携に加えるのは全国でもはじめての試みだ。
健康診断の受診率を上げることが課題
2011年患者調査によると、栃木県の糖尿病の有病者数は約5万人と推定されている。
県の健康・栄養調査によると、栃木県民は肥満が多く、BMI25以上の肥満の割合は男性 39.8%、女性 27.8%に上る。また、1日の歩数は男性 7,444歩、女性 6,911歩と運動不足が多い。
一方で、特定健康診査を受けている割合は40.7%と伸び悩んでいる。健診の受診率の引き上げも課題となっている。
栃木県の糖尿病腎症による新規透析導入患者数は年間251人で、全体の46%に上る。また、県の透析患者数約5,800人のうち糖尿病腎症が原因である患者の割合は約42%だ。
重症化予防プログラムでは、健保や企業が、重症化のおそれのある企業の従業員を把握して、保健指導や医療機関受診につなげる。糖尿病の重症化を防ぐため、県内の企業らが加入する健康保険と連携した予防の仕組みをつくる。
特定健診の受診率を向上するために、職場の健康診断メニューが大きく寄与している。糖尿病合併症を防ぐために、まず健康診断の受診率を上げることが課題となる。
「栃木県糖尿病対策推進会議」の活動を拡大
重症化予防プログラムの基礎となるのは、県で従来から進められている「栃木県糖尿病対策推進会議」だ。
栃木県糖尿病対策推進会議では、栃木県医師会、日本糖尿病協会栃木県支部、栃木県看護協会、栃木県栄養士会、栃木県教育委員会などの構成団体がそれぞれの活動を通じて相互に連携・協力している。
具体的には、合併症予防講習会や無料相談会の開催、とちぎ栄養ケア・ステーションの開設、医療連携支援事業の運営などだ。
県では、糖尿病の機能分担を進めるため「糖尿病の初期・安定期治療」「専門治療」「急性合併症治療」「糖尿病合併症(糖尿病網膜症・糖尿病腎症・糖尿病神経障害)の治療」の要件を定め、それぞれの治療を行う医療機関について情報提供を行っている。
医療費を抑えるには重症化予防が欠かせない。自治体と医師会など行政と医療関係者間の連携に加えて、企業や健保を連携に加え、全権規模で糖尿病対策を広めていく。
新たに策定する重症化予防プログラムは、健診受診者の中から糖尿病腎症などの合併症の素陸の高い人をみつけ、医療機関の受診や生活改善を促す仕組みにする。
街の「かかりつけ医」と専門の病院が連携して糖尿病患者を治療する仕組みや、重症化予防の対象者をレセプト(診療報酬明細書)や健診のデータを分析して割り出すプログラムは、既に医療の現場で活用されている。
栃木県糖尿病対策推進会議(栃木県医師会)
[ Terahata ]