40~69歳の人を対象に、健診成績や生活習慣を用いて、その後10年間の心筋梗塞と脳梗塞、脳卒中の発症リスクを予測するモデルを、国立がん研究センターや藤田保健衛生大学などの研究チームが開発した。インターネットで公開されており、誰でも利用できるようになっている。
健診成績や生活習慣から10年間の発症リスクを推定
サイトで公開されている予測モデルに健診データなどを入力すれば、自分の発症確率をチェックできる。
脳梗塞の予測に必要なデータは、年齢、性別、降圧剤使用の有無、収縮期血圧(上の血圧)、拡張期血圧(下の血圧)、糖尿病の治療、血糖値、喫煙の有無、善玉のHDLコレステロール、悪玉のLDLコレステロール、中性脂肪(リグリセライド)。
例えば、糖尿病の治療を受けており、空腹時血糖値が110mg/dLで、喫煙習慣がなく、血圧値やコレステロール値、中性脂肪値が高めで、肥満の54歳男性の場合、心筋梗塞が2.5%、脳卒中が9.4%と、リスクは高めに出る。
心筋梗塞と脳梗塞、脳卒中の発症リスクを予測するモデルを開発した目的は、健診成績や生活習慣の改善を行うことで、どの程度リスク低減できるかをシミュレーションし、実行可能な対策を考え、それらの疾患の予防に役立てることだという。
日本人1万5000人超を16年間調査 精度を検証
「JPHC研究」は日本人を対象に、さまざまな生活習慣と、がん・糖尿病・脳卒中・心筋梗塞などとの関係を明らかにする目的で実施されている多目的コホート研究。今回の研究は、藤田保健衛生大学、国立がん研究センターなどの研究チームがまとめたもの。
研究チームは1990年と1993年に茨城、新潟、高知、長崎、沖縄の4県で、心筋梗塞や脳梗塞を発症したことのない40~69歳の1万5,672人の男女を対象に平均16年間、追跡して調査した。
調査期間中に192人が心筋梗塞を発症し、552人が脳梗塞を発症した。得られたデータをもとに、研究開始時の健診成績・生活習慣からその後10年間の心筋梗塞および脳梗塞の発症確率の予測モデルを開発。
研究チームは岩手、秋田、長野、沖縄の別の調査でデータを得られた1万1,598人で検証し、予測モデルの正確さを確かめた。
あなたのリスクはどれくらい? リスク低減のために生活習慣の改善が必要
「将来、病気になる確率(リスク)を予測する目的は、予測を把握することをきっかけにリスク低減のために可能な対策を行い、予測通りにならないようにするです」と、藤田保健衛生大学の八谷寛教授は言う。
「健診結果から心筋梗塞や脳梗塞の発症リスクを予測して、禁煙するなどして生活習慣を改善することが大切。血圧・脂質・血糖値などの検査成績の改善効果を実感したり、シミュレーションして、心血管疾患の予防に役立ててほしい」と述べている。
この予測モデルの特徴は、心筋梗塞の発症を予測するために必要不可欠と考えられている善玉のHDLコレステロールの評価を、悪玉コレステロール(LDLコレステロールを含むnon-HDLコレステロール)に加え実施していること。研究チームは同様の同様の方法で、脳梗塞の発症リスク予測モデルの開発と検証も行った。
また、降圧薬を内服している場合は、血圧値が良好にコントロールされていても、服用していない場合よりも発症リスクが上昇することがある。ただし、降圧薬を服用すると心筋梗塞や脳梗塞の発症リスクが低下することは、信頼性の高い臨床試験によって証明されている。「現在降圧薬を服用中の患者は主治医の指示にしたがって、その治療を継続することが重要」と注意を促している。
循環器疾患リスクチェック(藤田保健衛生大学)
多目的コホート研究(JPHC Study)(国立がん研究センター がん予防・検診研究センター 予防研究グループ)
[ Terahata ]