TG値をHDL-C値で除した値「TG/HDL-C比」が、冠動脈の脆弱性プラークやポジティブリモデリングなど、急性冠症候群ハイリスク状態の独立した予知因子であることが報告された。岡山大学大学院医歯薬学総合研究科循環器内科の三木崇史氏らの第80回日本循環器学会年次学術集会(3月18〜20日・仙台)における発表。糖尿病で好発する冠動脈疾患に高TG血症や低HDL-C血症の関与することが知られており、TG/HDL-C比が新たな治療マーカーとなる可能性がある。
強力なLDL-C低下療法を行っていても冠動脈イベントは十分に抑制されない。これまでに報告されてきたさまざまな臨床研究から、スタチン介入による低下率は3割前後にとどまることが知られている。
LDL-C低下療法に限界がある理由として近年では、TGリッチリポ蛋白や低HDL-C血症など、高LDL-C血症以外の“残余リスク”の存在が、脆弱性プラーク等との関連において注目されている。そこで三木氏らはTG/HDL-C比と、冠動脈CT検査で抽出されるハイリスクプラークとの関連を検討した。
対象は安定狭心症が疑われる症例457例。主な患者背景は、年齢64±14歳、男性58%、BMI23±4、高血圧58%、脂質異常症45%、糖尿病28%、現喫煙者22%で、35%がRAS阻害薬、28%がカルシウム拮抗薬、25%がスタチン、18%がβ遮断薬を処方されていた。 128列 マルチスライスCT冠動脈造影を施行し、低輝度プラーク(CT値50HU未満)、ポジティブリモデリング(リモデリングスコア1.05以上)、微小石灰化のすべてに該当するものをハイリスクプラークと定義した。
TG/HDL-C比はHbA1cやBMIと相関するものの、LDL-Cとは相関せず
結果について、まずTG/HDL-C比と相関する因子を単変量解析で検討すると、BMI(r=0.15,p=0.001)、HbA1c(r=0.10,p=0.039)、尿酸値(r=0.13,p=0.006)、AST(r=0.10,p=0.029)、ALT(r=0.16,p=0.001)が有意だった。その一方で、年齢やLDL-C、血清クレアチニン、アガストンスコア(石灰化スコア)との関連は有意でなかった。
TG/HDL-C比3.03以上ではハイリスクプラークが有意に増加
次にROC解析の結果からハイリスクプラークを検出するTG/HDL-C比のカットオフ値を3.03とし、対象を2群に分類して冠動脈CTの所見との関連を検討したところ、ハイリスクプラークを有する割合は、低TG/HDL-C比値群で24%、高TG/HDL-C比値群で38%であり、有意な群間差がみられた(p=0.015)。
ハイリスクプラークと関連する因子として、単変量解析では、高TG/HDL-C比(3.03以上)、高齢(65歳以上)、男性、糖尿病が挙げられた(
表)。多変量解析で他の因子の影響を補正した後も高TG/HDL-C比は有意な相関因子だった(OR;1.92,95%CI;1.11-3.31,p=0.019)。
このことから、高TG/HDL-C比は、急性冠症候群を惹起しやすいハイリスクプラークの抽出に適すと考えられた。
三木氏は結論として、TG/HDL-C比は冠動脈イベント抑止のためのリスク層別化や治療指標として良好なマーカーとなり得るとまとめた。
[ mhlab ]