週3~4日以上の運動を実施している高齢者は、そうでない高齢者に比べ、「ADL」(日常生活活動)の能力が高いことが、「2014年度体力・運動能力調査」で判明した。また「普通体重」の人は「低体重」「肥満」に比べ、体力が高い傾向があることが分かった。
将来の介護を予防するために、運動を習慣として行い体力を向上させることや、「普通体重」を維持することが重要であることがあらためて示された。
高齢者の体力・運動能力は過去最高
スポーツ庁が「2014年度体力・運動能力調査」の結果を公表した。調査は、国民の体力・運動能力の現状を把握する目的で、前回の東京オリンピックが行われた1964年から行われている。
今回の調査で、高齢者の体力・運動能力は過去最高だったことが分かった。調査の対象となったのは全国の65~79歳の高齢者5,640人。65歳以上の高齢者は男女ともに、ほとんどの種目で過去の記録を上回る傾向が続いている。
6分間にどれだけの距離を歩くことができるかをみる種目(6分間歩行)では、75歳から79歳の女性で534.18メートルと、調査をはじめた1998年より50メートル近く伸びた。片足で立っていられる時間(開眼片足立ち)は、65歳から69歳の男性で87秒82と1998年の記録を18秒余り上回った。さらに新体力テストの合計点は、65~69歳の男女、70~74歳の女性、75~79歳の男女で過去最高となった。
運動をするほど高齢者の「ADL」は向上
今回の調査では、高齢者を対象に「ADLテスト」も行われた。「ADL」(日常生活活動)は「歩く」「服を着る」といった日常生活で必要な基本的な動作を示し、将来に介護が必要になるかどうかを示す指標になるという。
「休まないでどれくらい歩けるか」を尋ねたところ、▽運動をしていない高齢者では「20分から30分程度」という回答が男性で49.2%、女性で57.1%を占めたのに対し、▽週に3日以上運動している人では「1時間以上歩ける」と答えた割合が男性で73.9%、女性で60.5%に上った。
さらに、「何にもつかまらないで立ったままズボンやスカートがはけるか」を尋ねたところ、▽運動をしていない高齢者では男性で68.9%、女性で67.3%が「できる」と回答したのに対し、▽週に3日以上運動している人は男性で84.8%、女性で81.8%が「できる」と答えた。運動習慣のある高齢者ほどADL能力が高いことが示された。
調査では、このほかに「バスや電車に乗ったとき、立っていられるか」「布団の上げ下ろしができるか」など10項目についてADL能力を調査したが、いずれの項目でも運動する頻度が高い人の方のADL能力が高い傾向が示された。
また、75~79歳では65~69歳に比べ体力テストの記録が大きく低下するが、週3~4日以上の運動を実施している高齢者は、運動をしていない高齢者に比べて低下の度合いが小さかった。
「低体重」「肥満」の人は体力が低下している
調査では、メタボリックシンドローム予備群の体力がどれだけ低下しているかを調べるために、特定健康診査・特定保健指導の基準に採用されている「体格指数(BMI)」と体力・運動能力の関係を調査した。
BMIにより肥満度を「低体重」「普通体重」「肥満」に区分し、体力テストの合計点の総合評価により、▽「A」(体力年齢が実際の年齢よりも若い)、▽「B」(体力年齢と実際の年齢が同じ程度)、▽「C」(体力年齢が実際の年齢よりも老いている)の3段階で評価したところ、男女ともに「普通体重」群では「A」「B」と評価された人の割合が、「低体重」「肥満」の2群に比べて多いことが判明した。
男性では、体力テストの評価が「A」「B」と評価された割合は「普通体重」では55.6%だったが、「低体重」「肥満」ではそれぞれ34.3%と49.6%だった。一方、女性では「A」「B」と評価された割合は「普通体重」で50.7%だったのに対し、「低体重」「肥満」ではそれぞれ44.3%と42.6%だった。
平成26年度体力・運動能力調査結果の概要及び報告書について(文部科学省 10月13日)
[ Terahata ]