「なかなか眠れない」「夜中に起きてしまう」「眠りたいのに眠れない」という不満をもっている人は多い。心地良く眠るために、室温と体温の調節、照明の工夫、快眠リズムを体に刻むことが大切だ。生活を見直すポイントをまとめた。
よく眠れない日がある、あるいは朝になかなか起きられないという悩みをおもちではないだろうか。そうだとしたら、悩んでいるのはあなただけではない。米国睡眠学会によると、睡眠の悩みをもつ成人は30~35%に上るという。特に多くのストレスを受けている人、高齢者、メンタルケアを必要としている人にとって、睡眠の改善は深刻な問題だ。
毎日十分な睡眠時間を確保し、朝に気持ちの良い目覚めを得るために、睡眠の質を高める工夫が必要だ。日常で少し気を付けるだけで睡眠を改善できると、アラバマ大学バーミンガム校の内科医であり睡眠医学の専門家であるエイミー アマラ氏は指摘している。
1. エアコンで室温を管理する
睡眠はその深さと特徴によって、レム睡眠とノンレム睡眠に分類される。眠りに落ちると、まずレム睡眠が始まり、しばらくすると深いノンレム睡眠のステージに入る。このサイクルは平均的に約90分で繰り返される。
室温は睡眠の質に大きな影響を与える。暑い、あるいは寒いと感じると、ノンレム睡眠が中断され、睡眠の質が悪化する。
研究では、睡眠にとって最適な室温はおよそ20度と比較的低いことが判明している。エアコンのタイマー機能を利用すれば、気温を簡単に設定できる。室温を調整して、睡眠に適した温度に管理すると効果的だ。
2. 入浴して体を温めると寝付きが良くなる
就寝の2~3時間前に入浴すると、寝付きが良くなりやすい。これは、入浴すると体温が一時的に上がり、後に下がるからだ。
体温が0.5度くらい上昇すると寝付きが良くなる。38度のぬるめのお湯で25~30分、42度の熱めのお湯なら5分程度の入浴で、体温がちょうど良い加減に上昇する。
また半身浴でも寝付きが良くなる効果が認められている。腹部までを湯船につけ、熱めのお湯で30分ほど軽く汗をかく程度に入浴するのが半身浴だ。自分の体調や好みにあった入浴法を知っておくと便利だ。
3. 寝室の照明を調整して体内時計を整える
体の中には体内時計が備わっており、睡眠のタイミングや生理的な活動を調節している。体内時計のリズムを調整しているのはメラトニンというホルモンで、体内時計のリズムが崩されるとメラトニンが減少することが分かっている。
このメラトニンの分泌はわずかな光で乱れやすい。ハーバード大学医学部の研究によると、明るい室内灯を浴びるだけでメラトニンの量が50%減るという。
家庭の照明(照度100~200ルクス)でも、長時間浴びるとメラトニンの分泌が抑制され、体内時計が遅れる原因になるので、夜は明るい光を浴びないようにしよう。
この傾向は特に青色の光で強まり、オレンジ色の光では弱まる。寝室の照明は黄色やオレンジ色などの暖色系にすると、質の良い睡眠を得やすくなる。
4. 就寝前の食事とアルコールを避ける
体内時計を整えるために、規則正しい食事が望まれる。就寝に近い時間の夕食や夜食は、消化活動が睡眠を妨げるのでできるだけ控えた方が良い。
マウスを使った研究では、食事をとる時間を昼夜で逆転させると、食事をとることで大脳皮質や肝臓の活動が活発になり、睡眠をとれなくなることが分かった。
また、コーヒー・緑茶・チョコレートなどカフェインが含まれる飲食物は覚醒作用があるので注意が必要だ。これらの食品は、就寝の5~6時間前から控えた方がよい。
アルコールは睡眠を促進するので、寝酒を飲む人が少なくないが、就寝前のアルコールは決して勧められない。
アルコールが体内で分解されるときに発生するアセトアルデヒドがノンレム睡眠を阻害し、眠りが浅くなってしまう。アルコールは、睡眠全体の質を改善する役にたたない。
5. ウォーキングが睡眠の質を高める
運動習慣がある人は不眠が少なく、寝付きが良いことが多くの研究で確かめられている。運動の内容も睡眠に影響する。1回の運動だけでは効果が弱いので、習慣的に続けることが重要だ。
ウォーキングなどの長続きする適度な有酸素運動は睡眠の質を高めることが分かっている。運動のタイミングに注意を払えば、さらに良い睡眠が確保できるようになる。効果的なのは夕方から夜の、就寝の3時間くらい前の運動だ。
就寝の数時間前に運動によって脳の温度を一過的に上げると、床に入るときには脳の温度が低下しやすくなり、快眠を得やすくなる。ただし就寝直前の運動は体を興奮させてしまうので禁物だ。
Tips on insomnia, snooze buttons, hot baths, putting phones away and more(アラバマ大学バーミンガム校 2015年8月27日)
[ Terahata ]