糖尿病の人はそうでない人に比べ、心筋梗塞や脳卒中などの循環器疾患やがんによる死亡率が上昇することが、国立国際医療研究センターなどの研究グループが実施している、日本人9万人を対象とした多目的コホート研究「JPHC研究」で明らかになった。
糖尿病の人では死亡リスクが増加
「JPHC研究」はさまざまな生活習慣と、がん・脳卒中・心筋梗塞などとの関係を明らかにする目的で実施されている多目的コホート研究。今回の研究では、40~69歳の男女約9万人を対象に1990年または1993年から2011年まで追跡調査した。
研究グループは、1990年と1993年に岩手、秋田、長野、沖縄、東京、茨城、新潟、高知、長崎、大阪の11保健所管内に在住しており、がんや循環器疾患になっていなかった40~69歳の男女約10万人を、2010年末まで追跡し調査した。結果にもとづき、糖尿病(自己申告)の有無と全死亡・主要死因死亡との関連を調べた。
糖尿病は一般的には生命に関わる疾患とは考えられていない傾向があるが、糖尿病の人ではそうでない人と比べて死亡のリスクが高いという研究報告がある。研究グループは日本人において、糖尿病と全死亡および循環器疾患による死亡、がんによる死亡のリスクとの関連を調べた。
その結果、研究開始時に糖尿病があった群ではそうでない群と比べて、総死亡の危険度のハザード比(95%信頼区間)は、男性で1.60倍(1.49-1.71)、女性で1.98倍(1.77-2.21)に増加していることが判明した。
死因別に解析したところ、循環器疾患による死亡については男性で1.76倍(1.53-2.02)、女性で2.49倍(2.06-3.01)、がんによる死亡については男性で1.25倍(1.11-1.42)、女性で1.04倍(0.82-1.32)になった。がんや循環器疾患でない場合の死亡についても、男性で1.91倍(1.71-2.14)、女性で2.67倍(2.25-3.17)に上昇した。
良好な血糖コントロールの重要さを再確認
循環器疾患については女性の虚血性心疾患で約4倍と大きなリスクの上昇がみられた。がんによる死亡リスクの上昇は中等度だったが、男性の肝がん、膵がんおよび女性の肝がんについてはリスクが高く、糖尿病でない人と比べて2倍程度に上昇した。
また研究開始後に糖尿病を発症した人も対象に糖尿病発症時期と死亡との関連を調べたところ、診断された時期が昔であるほど糖尿病による死亡のリスクが高いことが判明した。さらに年齢層ごとの解析では、年齢が若いほうが糖尿病による死亡のリスクが高いことも分かった。
糖尿病の人では血糖コントロールが良好でないと血管に障害が起こりやすいことが、循環器疾患による死亡が増加する原因として考えられるという。また、JPHCの過去の研究では、糖尿病によりがんになるリスクが増加することが分かっている。
今回の研究ではがんや循環器疾患ではない死亡についても、糖尿病によるリスク増加が認められた。糖尿病患者が良好な血糖コントロールを維持することの重要さがあらためて示された。
今後は、循環器疾患やがんを含めて、糖尿病で死亡リスクが増加する原因について解明することが求められているという。なお、今回の研究では、糖尿病があるかどうかをアンケート調査の自己申告によって調べているので、糖尿病有病者を100%把握できていない可能性がある。
多目的コホート研究「JPHC Study」(国立がん研究センター がん予防・検診研究センター 予防研究グループ)
Diagnosed diabetes and premature death among middle-aged Japanese: results from a large-scale population-based cohort study in Japan (JPHC study)(BMJ Open 2015年5月3日)
[ Terahata ]