喫煙者もしくは過去に喫煙経験のある人は、健診で行われている基本的な肺検査で「異常なし」と判定されても、半数以上が肺疾患を発症している可能性があるという調査結果が発表された。
健診で「異常なし」と判定された人の半数以上で呼吸器障害を発見
喫煙者と長期の喫煙経験のある人のうち、健診の一般的な肺検査で「異常なし」と判定された人を対象に、胸部CT検査、スパイロメーター(肺活量計)検査、歩行検査、呼吸器に関するQOL(生活の質)の聞き取り調査などでより詳しく調べたところ、半数以上で呼吸器関連の障害が認められることが判明した。
発見された肺の異常の多くは「慢性閉塞性肺疾患」(COPD)で、肺がんなどの進行性の疾患の早期段階とみられる患者も多いという。
喫煙率の低下により、米国では肺がんによる死亡数が減少しているが、「肺がんは依然として大きな脅威であり、禁煙に向けたさらなる対策が必要とされています」と、全米ユダヤ医療センターのエリザベス レーガン氏は指摘している。
レーガン氏らは、1日に1箱以上の喫煙を10年間続けていた45~80歳の8,872人を対象に調査を行った。半数は広く行われている健診の肺検査で「異常なし」と判定されていた。
だが、身体的な機能障害、呼吸器症状、CT検査、投薬状況、呼吸器が関連する生活の質に関する問題などの検査をした結果、「55%に何らかの呼吸器機能障害が認められることが判明しました」と、レーガン氏は言う。
一般的な健診で「異常なし」と判定された人を対象に、CTスキャンで詳しく調べたところ、42%で肺気腫や喉頭炎が発見された。
また、「息切れがする」と答えた人は、非喫煙者で3.7%だったのに対し、喫煙者では23%に上った。さらに、6分間歩行テストを行ったところ、350m未満の異常が認められたのは非喫煙者では4%だったが、喫煙者では15%に認められた。
"喫煙習慣があるが健康"は誤り
「喫煙者の半数は呼吸器疾患を発症しており、その多くは初期のCOPDであることが判明しました。そして、その多くは一般的な健診では見逃されています」と、レーガン氏は言う。
喫煙は身体機能と生活の質の両方を低下させる。1日に30分以上の喫煙を続けている人には、肺のCTスクリーニングが必要で、COPDや肺がんを早期発見できれば、死亡率を20%低下できる可能性があるという。
米疾病対策センター(CDC)によると、米国の喫煙者数は約4,200万人に上るという。CDCは、国内の予防可能な疾患と死亡の原因の第1位に喫煙を挙げている。
「今回の研究で、"喫煙習慣があるが健康"という俗説は誤りであることが明らかになりました。喫煙による長期的な悪影響や肺疾患を予防するために、禁煙を促す対策がいっそう必要であることが浮き彫りになりました」と、レーガン氏は指摘している。
この研究は、米国医師会内科学雑誌「Journal of the American Medical Association Internal Medicine」に発表された。
Millions of smokers may have undiagnosed lung disease(全米ユダヤ医療センター 2015年6月22日)
Clinical and Radiologic Disease in Smokers With Normal Spirometry(Journal of the American Medical Association Internal Medicine 2015年6月22日)
(7月13日にご指摘をいただき訂正しました)
[ Terahata ]