汗をかく夏が近づくと気になるのが、ワキガなどの体臭だ。近年は暑い日が増えているので、効果的な体臭対策が求められる。「ワキガなどの体臭は、日常生活で気を付ければ、抑えることができます」と専門家はアドバイスしている。
汗をかく夏は体臭が気になる時期
「ワキガなどの体臭は、日常生活で気を付ければ、ある程度抑えることができます。体臭がひどく気になる場合は、治療法もあります」と、ニューヨーク市のマウントサイナイ医科大学のエリック シュヴァイガ氏は説明する。
実は人の皮膚や汗自体にはとくに臭いはないが、汗皮や脂などが細菌によって分解されることで臭いが発生する。
汗を出す汗腺には、全身に分布してほぼ水分の汗を出す「エクリン汗腺」と、ワキの下などの一般的に体毛が多い部分にある「アポクリン汗腺」の2種類がある。
ワキの下の臭いは主に、アポクリン汗腺から出る尿素やアンモニアを含んだ汗が、皮脂腺から分泌される脂質や、皮膚の表面のタンパク質と混ざり合い、皮膚や毛包にひそんでいる常在細菌によって分解されることで発生する。
ワキの下の臭いを軽減させる方法
ワキの下はもともと汗腺が多いうえに、緊張やストレスなどの精神的な刺激と、気候や運動による温熱刺激の両方で発汗が促され、多汗が起こりやすい部位だ。
ワキの下の臭いを軽減させる方法には次のようなものがある――
● ワキの下を清潔にする
シャワーを1日に1回以上を浴びて汗を流し、皮膚などにいる細菌の数を減らす。抗菌セッケンを使えばより効果的だ。
● シャワーの後で良く乾かす
シャワーを浴びた後にタオルでよく拭き、ワキの下をしっかり乾かす。皮膚を乾かすと細菌は増えにくくなる。
● 汗を吸いやすい生地の衣服を着る
汗をかいたら衣服を着替えるようにする。吸汗性に優れたシャツが効果的だ。コットンやウールなどの自然素材など以外にも、吸汗性のあるシャツなどを利用すると、細菌の繁殖を抑えられる。
● デオドラントや制汗剤を使用する
「デオドラント」には、皮膚を酸性にして細菌の活動を抑制する効果がある。一方、「制汗剤」は、汗腺をブロックして発汗量を抑える。ベビーパウダーにもワキの下の臭いを抑える効果がある。
● ハーブを使用する
ワキガの原因になる細菌は、酸性よりアルカリ性のときのほうが繁殖しやすい性質がある。ふつう皮膚表面は弱酸性だが、大量に汗をかくとアルカリ性に傾き、細菌が繁殖しやすい。
デオドラントや制汗剤が体に合わない場合には、自然のアロマを利用するのもいいだろう。レモンやライムの柑橘系のアロマを使い酸性にすると、体臭の軽減に有効という報告もある。
ワキの汗の悩み、もしかしたら病気かも
多汗症の原因に別の病気が潜んでおり、原因となる病気を先に治療する必要がある場合もある。
肝臓病を患う人では、体を構成するタンパク質が分解されてできるアンモニアを、肝臓で処理できなくなることがある。そのアンモニアが体の皮膚や吐いた息から放出されると、強い体臭となる。
また、血糖値が高くなっていると、体内で糖を利用できずに、脂肪を燃焼してエネルギーをつくりだそうとする。その際、ケトン体という臭いのもととなる物質が発生し、甘酸っぱい口臭や体臭を生み出す。
いずれも、健診を受け病気を発見し、医療機関で適切に治療することが重要だ。
医療機関で多汗症の治療が可能
ワキの下の臭いが強くて、日常生活に支障が生じる場合は、医療機関で治療を受ける方法もある。特別な原因がないのにワキの下に多量の汗をかく場合は「多汗症」と診断される。
強い抗菌・殺菌成分の入った制汗剤を長期間にわたって使い、皮膚のかぶれや湿疹などのトラブルを招くことがある。そうした場合では、皮膚科などで多汗症の治療薬として、汗腺を塞いで汗を抑える制汗作用のある「塩化アルミニウム」が用いられる。
ボツリヌス菌がつくる天然のタンパク質を有効成分とする薬をワキの下に注射する「ボツリヌス療法」という薬物療法も効果的だ。薬が神経から汗腺への刺激を抑え、発汗を抑えられる仕組みで、効果は4〜9ヵ月持続する。
根治療法ではないが、こういった治療で8割の患者が体臭を軽減できるという。もし医療機関で治療を受ける際は、事前に医師から十分な説明を受けておこう。
Managing body odour(イギリス国民保健サービス 2014年3月7日)
[ Terahata ]