バイエル薬品と参天製薬は4月23日、糖尿病網膜症の予防に関する患者調査の結果を公表した。糖尿病と診断された患者の6割以上は、眼科未受診、または眼科初回受診まで1年以上経過していることや、いったんは眼科に受診しても、その後、受診を中断している患者が少なくないという実態が明らかになった。同日行われたプレスセミナーでは、調査監修者である東京女子医科大学糖尿病センター眼科教授・北野滋彦氏が、調査結果の概要を述べるとともに、糖尿病による視覚障害の現状、抗VEGF薬を用いた新規治療法について講演した。
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北野滋彦氏 |
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この調査は、過去に2型糖尿病と診断され、現在その治療のために通院している20〜79歳の患者1,000名に対し、今年3月、インターネットを用いて行われた。回答者の主な背景は、罹病期間(診断されてからの期間)については割合の多い順に、10年以上20年未満が32.1%、5以上10年未満が30.1%、2年以上5年未満が23.8%、20年以上が13.6%、1年以下が0.4%で、罹病期間10年以上が全体の45.7%。HbA1cは、6.5〜6.9%が23.1%、7.0〜7.4%が21.9%、6.0〜6.4%が19.0%、8.0%以上が13.5%、7.5〜7.9%が9.5%、5.6〜5.9%が7.4%、5.5%以下や‘わからない’が5.6%で、HbA1c7.0%以上が全体の44.9%。
糖尿病患者の6割以上が眼科未受診か診断から1年以上たってから眼科受診
まず、糖尿病と診断されてから眼科を初めて受診するまでの期間についての質問をみると、糖尿病診断から1か月以内に眼科を受診したのは全体の15.3%で、1〜3か月以内が7.6%、3〜6か月以内が6.5%、6か月〜1年以内が9.7%、1〜5年以内が22.6%、5年以上経過してからが14.4%で、残りの23.6%は眼科を未受診だった。眼科未受診の者と糖尿病診断から眼科初回受診まで1年以上経過していた者の合計は60.9%で、内科には通院しているにもかかわらず、眼科を受診していない患者が少なくない実態が明らかになった。
眼科を受診していない23.9%(n=239)を対象にその理由をたずねると、一番多かった答は「糖尿病治療医から眼科を受診するように言われなかったから」(48.5%)で、「特に理由はない」(24.7%)が2位、「日常生活に支障がでていなかったから」(22.2%)が3位だった。
眼科受診中断理由のトップは「医師から眼科の受診を続けるようにと言われなかった」
眼科の受診頻度についての質問をみると、1か月に1回以上受診しているのが3.7%、2〜3か月に1回が11.5%、4〜6か月に1回が17.2%、1年に1回が21.4%、現在は受診していないが22.3%、残り23.6%は前記のように眼科未受診だった。
現在は受診していない22.3%(n=223)に対するその理由についての質問では、「眼科医や糖尿病治療医から眼科の受診を続けるようには言われなかったから」(28.7%)が最も多く、「前回の眼科受診の際、眼科医より『目は大丈夫』と言われたから」(26.9%)が2位、「特に理由はない」(19.7%)が3位だった。
現在、治療ガイドライン等で、糖尿病と診断された時点から少なくとも年1回以上の眼科定期受診を推奨しているが、今回の調査結果から、その推奨内容と実態の乖離が明らかになった。糖尿病網膜症と視覚障害の関連、視覚障害を防ぐための眼科受診の意義などについて、糖尿病医・眼科医双方から患者への一層の情報提供が求められる。
抗VEGF治療は糖尿病黄斑浮腫の安全で有効な治療
北野氏はこれらの調査結果のほか、糖尿病網膜症・黄斑浮腫について病態と治療法について概説。抗VEGF薬の適応拡大により糖尿病黄斑浮腫の治療が格段に進歩した現状を紹介。抗VEGF薬は安全で有効な治療であり、早期からの頻回投与がより効果的な可能性があることを述べた。
その一方で、コスト患者負担軽減のためステロイドや光凝固等との併用により、投与回数を減らしながら治療効果を上げる効率的な方法が試行錯誤されている現状を解説した。
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