軽度認知障害をもつ人が糖尿病を併発していると、認知症を発症するリスクが65%高まることが明らかになった。良好な血糖コントロールを維持することで、認知症を予防できる可能性がある。
軽度認知障害を発症した糖尿病患者は認知症を発症しやすい
「軽度認知障害」(MCI)は、認知症と正常の中間にある状態。物忘れが主な症状で、日常生活への影響は少ないが、認知症に進行しやすい状態なので、適切な治療を行うことが大切だ。
65歳以上の19%がMCIを発症しているとみられており、同年齢の人が認知症を発症する割合が3%なのに対し、MCIを発症した人の46%が3年以内に認知症を発症するという。
ユニバーシティ カレッジ ロンドン(UCL)の研究チームはMCIに関する62件の研究を解析し、MCIと診断された人1万5,950人を対象に調査した。研究は、米国精神医学会誌に発表された。
その結果、MCIと糖尿病を併発している患者は、認知症に進展する割合が65%高いことが判明した。また、うつ病などの精神疾患のある人ではリスクは2倍以上に高まっていた。
「体と心の病気には密接な関連があります。体を健康に保つことが、脳の機能を適切に保つために必要です。糖尿病の人は、血糖コントロールをしっかり行うことが必要です」と、UCLのクローディア クーパー氏(精神医学)は言う。
米国アルツハイマー病学会は、認知症を防ぐために、「野菜や果物を十分にとる」「肉などの動物性食品から飽和脂肪酸を摂りすぎない」、「運動を習慣的に行う」「社会的な交流を活発に行いアクティブに過ごす」といった生活スタイルを勧めている。
軽度認知障害の段階で適切な治療をすれば、認知症に進行するのを防ぐことができると考えられている。そのためには早期に介入し適切な治療を行うことが重要だ。
血糖コントロールを改善し、健康的な生活を続けることで、認知症などの精神疾患を防げる可能性がある。
ドイツで実施された生活スタイルと動脈硬化の関連を調べた大規模調査でも、50?65歳の糖尿病患者では、MCIを発症するリスクが2倍に上昇することが示された。
ただし、MCIがある人では認知症になるリスクが増加するが、実際に認知症になる人は多くなく、いったんMCIになった後に認知能力が通常に戻すことも可能だという。
「高齢者の認知症は世界的に増え続けています。今回の調査で、認知症を予防し社会的な負担を減らすために、現時点での最良のエビデンスを示すことができました」と、UCLのギル・リビングストン教授(精神医学)は述べている。
Diabetes and depression predict dementia risk in people with slowing minds(ユニバーシティ カレッジ ロンドン 2015年2月20日)
Diabetes Mellitus and Mild Cognitive Impairment: Higher Risk in Middle Age?(IOS Press 2014年9月3日)
[ Terahata ]