1型糖尿病を発症する小児の一部では、発症1年前から胃の細菌叢に変化がみられるとの小規模研究の結果が、「Cell, Host & Microbe」オンライン版に2月5日報告された。
米ハーバード大学と米マサチューセッツ工科大学(MIT)が共同で運営するBroad 研究所博士研究員のAleksandar Kostic氏らによる研究。同氏は、「長い道のりになる」と前置きしながらも、この結果が1型糖尿病の早期診断や、腸内生態系を標的とする新しい1型糖尿病治療の開発につながる可能性もあると述べている。
1型糖尿病は、血糖をコントロールするインスリンを産生する膵細胞を免疫系が誤って攻撃してしまう先天性疾患だ。実用化された根治療法はまだなく、患者は生涯にわたってインスリン注射を頻繁に受けるか、インスリンポンプを使用しなければならない。
JDRF(旧・青少年糖尿病研究財団)によると、米国の1型糖尿病患者は推計約300万人で、小児期の発症が多いが、成人期の発症者も存在する。
1型糖尿病でなぜ免疫反応に異常が生じるのかは不明だが、免疫機能に関連する特定の遺伝子多様体(バリアント)をもつことが、1型糖尿病のリスクに関連するとされている。
今回の研究では、この遺伝子多様体をもつフィンランドとエストニアの乳児33例を追跡。微生物叢の変化を知るため、便試料が分析された。
追跡の結果、3歳までに4例が1型糖尿病を発症しており、これらの児では発症1年前から、腸内細菌の多様性の減少など微生物叢に大きな変化がみられた。Kostic氏は、多様性の減少が他の“悪者”が棲みつく隙を与えるという熱帯雨林の消滅に例え、糖尿病を発症した児では、有益な脂肪酸を産生する“善玉菌”の減少と、炎症に関連する微生物の増加がみられた、と説明している。
ただし、この腸内細菌のシフトが1型糖尿病の背景にある異常な免疫反応の原因なのか、結果なのかは不明であり、今後の検討課題になるという。
JDRF発見研究部長のJessica Dunne 氏は、次のステップは、腸内微生物叢が影響する生理学的経路を理解することだと指摘。1型糖尿病の予防または発症遅延にプロバイオティック療法が有用であるという可能性に、研究者らは興味を示し始めていると述べている。
幼児における今回の知見がより年長の小児や成人1型糖尿病患者にも当てはまるかどうかは不明だが、微生物叢の変化が糖尿病発症の徴候となるならば、疾患の早期発見方法につながる可能性はある、と両氏は述べている。
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[ Terahata ]