40歳以下の2型糖尿病患者の7割以上が、体格指数(BMI)が肥満の基準である25を上回る30以上で、生活環境が糖尿病の発症に関連していることが、全日本民主医療機関連合会(民医連)の調査で明らかになっていた。非正規労働者の増加や未婚率の増加、相対的貧困率の増加などの社会経済的状態も大きく影響しているという。
調査は2011年10月〜2012年3月末に行われ、民医連に加盟する全国96医療機関を受診した20〜40歳の2型糖尿病患者782人を対象に、病歴や合併症の有無、生活環境などについて尋ねた。
調査の対象となった40歳以下の患者は、全体に平均世帯収入や学歴が低く、非正規雇用が多い傾向がみられたという。そうした社会経済状況(SES)が、糖尿病の発症や血糖コントロールに影響している可能性が高いという。
40歳以下の2型糖尿病では肥満が多い
調査対象者の多くは、20歳のときからすでに肥満状態で、その後さらに肥満が進行し、調査時点でも高度の肥満状態にある傾向が示された。調査時までの最大BMIが30以上だった人は、男性74.1%、女性73.8%だった。
日本の糖尿病患者の平均BMIは23程度で、全体的には肥満は少ないという報告があるが、40歳以下の2型糖尿病に限ってみると、肥満との関連が強いことが示された。
40歳以下ですでに合併症を発症
40歳以下ですでに糖尿病網膜症を合併している人は22%で、うち単純網膜症は59.1%だった。糖尿病腎症を併発している人(タンパク尿ありと腎不全の合計)も15.9%と高率だった。
就学年数が短かかったり、非正規雇用、生活保護受給、未婚または離婚のひとり暮らしの人に、合併症が多い傾向がみられた。
「治療費の負担感」が血糖コントロール悪化の原因
HbA1c7.0%未満の人と、7.0%以上の人を比較し、糖尿病のコントロールに関連する要因を分析したところ、「家族歴ある」「1日の睡眠時間が長い」「治療費負担感が高い」といった要因が血糖コントロールの悪化に影響していることが分かった。
治療費の負担が重いと感じていることが、定期的な受診の妨げとなり、血糖コントロールをさらに悪化させる原因になっている可能性がある。
夜10時以降の食事と、短い睡眠時間も血糖コントロールを悪化させる要因となることも明らかになった。夜遅く帰ってきて、食事も睡眠の時間も遅くなるような生活形態や、仕事とは関係なく夜食(間食)をとるような生活習慣は、血糖コントロールを乱す原因になる。
患者のヘルスリテラシーを高める対策が必要
定期的に受診できていない理由は、「忙しくて時間がとれない」(34%)、「診療時間に仕事がある」(27%)、「経済的に苦しい」(19%)が多かった。
患者自らが、糖尿病の病態、合併症の予防、今後の予測、検査結果の理解、食事や運動、薬の役割などの基本的な健康情報を理解し、自分の療養生活に反映させていく能力を「ヘルスリテラシー」という。
患者がヘルスリテラシーを身につけるためには、医療者と患者の情報の共有や療養指導の改善が重要となる。報告書では「貧困による健康格差をなくす取り組みと同時に、患者の治療に対する姿勢・積極性を高めるためにどんな工夫ができるのか、医療現場に検討が求められる」と指摘している。
患者にとっては、仕事をしながら療養できるような労働環境の改善が必要となる。研究をまとめた城北病院(石川県)の莇也寸志副院長は「医療者にとっては、患者の療養姿勢のみをみるのではなく、治療を中断してしまう患者の社会的な背景にまで配慮し、悩みに積極的にかかわる姿勢も必要」と訴えている。
全日本民医連「暮らし、仕事と40歳以下2型糖尿病についての研究」結果公表(全日本民医連医師臨床研修センター 2014年10月29日)
[ Terahata ]