女性の糖尿病患者では脳卒中の発症が多く、閉経後や血糖コントロール不良の女性でその傾向が強まることが、3万人を対象とした調査で明らかになった。
女性の糖尿病患者は脳卒中を発症しやすい
この研究は、米ペニントン生物医学研究センター(バトンルージュ)のウェンフイ ツァオ氏とガン フゥ氏らによるもので、欧州糖尿病学会(EASD)が発行する医学誌「ダイアビトロジア」に発表された。
男性の患者に比べ、女性は脳卒中の発症リスクが高いことは、過去の研究でも指摘されている。米国では2010年に、7万7,109人の女性と5万2,367人の男性が脳卒中が原因で死亡しており、女性が6割を占めている。
研究結果についてフゥ氏は、「糖尿病をもつ女性、特に閉経後や55歳以上の女性は、脳卒中のリスクが高い。良好な血糖コントロールと、関連する要因を積極的に治療することで、脳卒中を予防・治療する必要がある」と、コメントしている。
高齢の女性で脳卒中が増える要因として、女性ホルモンであるエストロゲンの減少を挙げている。「女性の体はエストロゲンによって守られている。特に閉経後の女性ではエストロゲンが急減し、糖尿病のような脳血管疾患リスク因子の攻撃を許してしまう」と解説している。
研究チームは、「ルイジアナ州立大学病院ベース縦断研究」(LSUHLS)参加した、脳卒中の危険性の高い2型糖尿病患者3万154人(男性 1万876人、女性 1万9,278人)を対象に調査した。
平均6.7年の追跡期間中に約2,949例が脳卒中を発症した。データを解析すると、女性患者ではHbA1c値が高くなると脳卒中の発症率が上昇することが判明した。HbA1cが6.0~6.9%のグループに比べ、8.0~8.9%のグループで19%、9.0~9.9%のグループで32%、10%以上のグループで42%、それぞれ脳卒中が増えていた。
また、55歳以上の女性糖尿病患者では、55歳未満に比べて発症リスクが大幅に高くなっていた。こうした糖尿病と脳卒中の関連は男性では認められなかった。
「女性の糖尿病患者は脳卒中を発症しやすいことが明らかになった。血糖コントロールが良好でない女性や、閉経後や高齢の女性で、脳卒中のリスクが高い。女性の脳卒中は重症化しやすいことが知られる。脳卒中予防・治療を適切に行う必要がある」と、フゥ氏は結論を述べている。
なぜ糖尿病の女性の方が男性よりも、脳卒中を発症しやすいのだろうか? フゥ氏は以下の要因を指摘している。
・ 女性の方が男性よりも平均寿命が長いので、脳卒中を罹患する確率が高い。
・ 女性の方が血圧や脂質のコントロールが良くない傾向がある。
・ 男性の糖尿病患者は心血管疾患の発症リスクが高いので、アスピリンやスタチン、降圧薬などで治療を行う可能性が高い。
「脳卒中リスクの高い女性患者は、より積極的な糖尿病の治療と、その他のリスク因子の管理を行うことで、脳卒中を減らすことができるだろう」と述べている。
Sex differences in the risk of stroke and HbA1c among diabetic patients(ダイアビトロジア 2014年2月24日)
[ Terahata ]