糖尿病予備群の段階で、HbA1cの検査を定期的に行うと、糖尿病の発症を早期に予測できるという研究が発表された。「現在はHbA1cが正常域にある人も、年齢が45歳を過ぎたら、検査を毎年受けることが大切です」と、研究者はアドバイスしている。
「HbA1c 6%以上」の人は糖尿病の発症率が約5倍に上昇
HbA1c(ヘモグロビン・エイワンシー)は、過去1〜2ヵ月の血糖の平均値を反映する検査値。HbA1cが6.5%以上になると「糖尿病型」と判定される。
HbA1cは赤血球内の酸素を運ぶ主要な血色素であるヘモグロビンに血液中のブドウ糖が結合したもので、ヘモグロビン全体に対する割合であらわす。ブドウ糖が多いほどヘモグロビンとたくさん結びつくため、HbA1cの数値も高くなる。
糖尿病の診断には血糖値、経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)などが行われているが、HbA1cは血糖値のように空腹時に測る必要もなく、食事に左右されずにいつでも検査ができるという利点がある。
イスラエルのテルアビブ大学サックラー医学部のナタリー ラーナー氏らは、2002〜2005年に、平均年齢58.25歳のイスラエル人1万201人の病歴を調査した。HbA1c値の平均は5.59%だった。全体の22.5%が、5〜8年以内に糖尿病を発症した。
糖尿病を発症した割合は、HbA1c値が4.5%だった患者に比べ、「5.5%以上、6%未満」の人で2.49倍、「6%以上、6.5%未満」の人で4.82倍、「6.5%以上、7%未満」の人で7.57倍に上昇していた。
「HbA1c値が0.5%上昇すると、糖尿病の発症リスクは倍増することが分かりました。HbA1cが高めであることが判明したら、食事や運動などの生活習慣を見直すことが必要です。かかりつけ医をもち、自分のHbA1c値について適切なアドバイスをもらうことを勧めます」と、ラーナー氏は話す。
現在、世界の3億8,200万人が糖尿病で、3億1,600万人が将来に糖尿病を発症する危険性の高い「糖尿病前症」と推定されている。糖尿病前症の段階でHbA1c検査を毎年受ければ、生活スタイルを改善することで、糖尿病や糖尿病合併症を高い割合で予防できるとみられている。
HbA1cは、検査前数日間の食事や運動などの生活習慣の影響はほとんど受けず、「ごまかしが効かない」検査値といえる。その分、高血糖、さらには糖尿病を早期に発見できる可能性が高い。
「糖尿病を診断するために使われているHbA1cによって、健康障害を引き起こす危険度がより高い者を集中的に発見し、その危険度を下げるよう働きかけるポピュレーションアプローチが可能になります」と、ラーナー氏は指摘している。
Nipping Diabetes in the Bud(テルアビブ大学 2014年1月27日)
[ Terahata ]