国際糖尿病連合(IDF)は、11月14日の世界糖尿病デーに合わせて、世界の糖尿病に関する最新の調査をまとめた「糖尿病アトラス 第6版」を発表した。
世界の糖尿病人口は爆発的に増え続けており、2013年現在で糖尿病有病者数は3億8,200万人(有病率 8.3%)に上る。有効な対策を施さないと、2035年までに5億9,200万に増加すると予測している。
日本の現在の成人糖尿病人口は720万人で、昨年の710万人から微増した。世界ランキングでは第1位の中国(9,840万人)、第2位のインド(6,507万人)、第3位の米国(2,440万人)をはじめ上位7ヵ国の順位は昨年と同じだが、第8位にドイツ(755万人)が新たに加わり、日本は昨年の9位から10位へと後退した。
「糖尿病アトラス」では、世界を7地域に区分し統計値を出している。日本が含まれる西太平洋地域は、世界でもっとも糖尿病人口の大きい地域だ。糖尿病有病数は1億3,820万人(成人人口の8.1%)で、2035年までに2億180万人に増加すると予測されている。中国とインドネシア、日本の3国が世界ランキングのトップ10に名を連ねている。
「糖尿病アトラス 第6版」の主な内容は次の通り――
- 2型糖尿病の有病者数は、世界のすべての国で増加している。糖尿病有病者の80%は低・中所得の国に集中しており、糖尿病に対する「豊かな先進国に多い疾患」というイメージが誤解であることが浮き彫りになっている。
- 糖尿病が原因で死亡した人は、2013年は510万人に上った。6秒に1人が糖尿病のために亡くなっている計算になる。2013年の糖尿病による経済的な損失は、総支出の11%に相当する54兆8,000億円(5,480億ドル)に上る。
- 糖尿病有病者のうち1億7,500万人は、糖尿病と診断されていない。糖尿病を早期発見するためのカギとなるのは血糖値検査で、治療の基礎となるのは食事や運動などの生活習慣の改善だ。糖尿病の発見と治療が遅れると、目、腎臓、神経に障害が起き、動脈硬化などの重大な合併症が起こりやすくなる。
- 2013年に1型糖尿病を発症した子供の数は7万9,000人以上。1型糖尿病の患者数は欧州(12万9,400人)や北米(10万8,600人)で多い。
- 耐糖能異常(IGT)は、先進国や経済成長が著しい途上国で増えている。耐糖能異常は、糖尿病と診断されるほどではないが血糖値が高くなっている状態だ。この段階から生活習慣の改善などの介入をすることで、糖尿病の多くは予防可能になる。医療分野の政策を推し進め、予防に向けて社会整備をする必要がある。
- 妊娠時に血糖値が高くなる「妊娠糖尿病」は2,140万人と推定される。妊娠糖尿病は母親と胎児にとって危険なだけでなく、出生した子供が成人してから2型糖尿病を発症しやすくなるなど、深刻な影響をもたらす。
次は...糖尿病有病者の半数が自分が糖尿病であることを知らない
「特に途上国では、糖尿病有病者の半数が自分が糖尿病であることを知りません。このことは糖尿病合併症の発症が増え、死亡率が上昇することを意味しています。世界糖尿病デーには、糖尿病はコントロールできる病気であり、合併症を予防できることを世界規模で呼びかけています」とIDF理事長のマイケル ハースト氏は述べている。
世界保健機関(WHO)は、不健康な食事や運動不足、喫煙、過度の飲酒などの原因が共通しており、生活習慣の改善により予防可能な疾患をまとめて「非感染性疾患(NCD)」と位置付けている。心血管疾患、がん、糖尿病、慢性呼吸器疾患などが主なNCDだ。
2013年5月にジュネーブで開催された第66回WHO総会では、NCDの予防と管理のための新たな行動計画(2013〜2020年)が、満場一致で採択された。具体的な目標として、「NCDによる早期の死亡の減少」、「運動不足の解消」、「有害な喫煙や飲酒の抑制」、「必要な医薬品を入手できるように社会整備を進める」などが掲げられている。
世界糖尿病デーのキャンペーンは毎年11月14日に、国際糖尿病連合(IDF)と加盟組織が主導し、160ヵ国以上の200以上の関連団体により執り行われている。糖尿病の脅威が世界的に拡大しているのを受け、1991年に国際糖尿病連合と世界保健機関(WHO)により制定された。世界糖尿病デーは2007年に国連決議で採択され、正式な国連デーとなった。今年は、5年間のキャンペーン「糖尿病教育と予防」の4年目にあたる。
IDF Diabetes Atlas
[ Terahata ]