糖尿病の治療の基本となるABCとは、「A=HbA1c」、「B=血圧」、「C=コレステロール」のこと。3つのゴールを達成すれば、糖尿病合併症を予防できる確率は大きく上昇する。ゴールを達成している患者は年々増えている。
米国で糖尿病の治療目標となる「ABC」を達成した患者が増えている。米国健康栄養調査(NHANES)に参加した4,926人の成人を対象にした調査結果が、米国糖尿病学会が発行する医学誌「Diabetes Care」に発表された。
米国疾病予防管理センター(CDC)は、糖尿病治療のポイントとして「ABC」を掲げている。心臓病、脳卒中、腎症、網膜症、足病変といった糖尿病合併症を予防するためには、3項目のゴールを達成することが必要だ。
「A」はヘモグロビンA1c(HbA1c)。HbA1cは血糖コントロールの善し悪しをあらわす指標で、検査の時点から過去1〜2カ月間の血糖状態を示す。米国糖尿病学会(ADA)の治療目標は7%未満。
「B」は血圧(Blood pressure)。糖尿病の人は高血圧を併発していることが多い。両者を併発すると、心臓病や脳卒中、腎症などの合併症の進行が早まるので、より積極的な血圧管理が必要となる。米国の治療目標は収縮期血圧が130mmHg未満、拡張期血圧が80mmHg未満。
「C」はコレステロール(Cholesterol)。LDLコレステロールは、増えすぎると血管壁に入り込み動脈硬化を進めるため、“悪玉”と呼ばれている。HDLコレステロールは余分なLDLコレステロールを回収し、動脈硬化を防ぐ働きをするため、“善玉”と呼ばれている。米国の治療目標は、悪玉のLDLコレステロールが100mg/dL未満、善玉のHDLコレステロールが40mg/dL以上。
血糖コントロールの「A」を達成した糖尿病患者の割合は、1988〜1994年の43%から、2007〜2010年には53%に増加した。血圧の「B」を達成した割合は51%、コレステロールの「C」を達成した割合は56%だった。
研究者は、糖尿病の治療法や治療薬が年々進歩しており、医療機関の受診率も向上していることを、理由に挙げている。特に脂質異常症に関しては、スタチンなどのコレステロール低下薬が普及したことが、治療の向上に役立っている。
また、米国でも糖尿病は急増しているが、政府や関連団体が糖尿病の啓発キャンペーンを展開していることも功を奏しているという。
一方で、「ABC」の3つのゴールを全て達成している患者は19%とまだ少ない。「目標達成までの道のりはまだ遠いのですが、糖尿病のより良いマネージメントに向けて、障害となっているものを取り除く努力が続けられています」と、研究者は話している。
「高齢者の増加に合わせて、今後も糖尿病人口は増えていく予測されています。より良いコントロールを実現すれば、糖尿病合併症を予防でき、長く健康に暮らせることが確かめられています」としている。
The Prevalence of Meeting A1C, Blood Pressure, and LDL Goals Among People With Diabetes, 1988-2010(米国糖尿病学会 2013年2月15日)
[ Terahata ]